院内報
こあら通信 第86号 2005 June
目次
・次の世代を育てる
・ヨコピ-の子育て知恵袋
・ホームケア
・おすすめの絵本
・スタッフ紹介-塩澤美由紀
次の世代を育てる
気持ち良い季節が続いています。5月のゴールデンウィーク明けに、初めてのことですが、米国の小児科学会に出席してきました。小児科関係のいくつかの学会が一同に会する大きな学会で、英語の苦手な私としてはちょっと二の足を踏んでいたのですが、参加してみると勉強になることがたくさんありました。
開催地はワシントンD.C.。テレビでしか見たことのない国会議事堂やホワイトハウス、スミソニアン地区の博物館や美術館も、学会の合間に見学することができたのも大きな収穫の一つです。
とても印象的だったことは小児科の中で次の世代を育てるという気持ちがとても強いことです。どのようにしたら良い論文が書けるか、どのようにしたら研究費を国から取れるか、良い職をどのように見つけることができるか、というようなワークショップや講習会が、学会の中にたくさんあります。
また違った世代の医師がどのようにして上手にコミュニケーションを取っていけるか、というような討論会もありました。そして、どのような教育をしたら良い小児科医が育つかということ自体が研究の対象になっていて、それに関する発表が数えきれないくらいたくさん出ていました。学会の運営自体も、日本のように有名な教授が仕切るというのではなく、若い医師を中心にして運営が行われています。
米国の年輩の小児科医にどうして学会の活動として教育に力を入れるのかと尋ねたら、自分たちがどんなに頑張って良い仕事をしても、それが続かなければ意味がないという返事が戻ってきました。
この言葉はとても印象的でした。どんな仕事でも、次の世代を育てることをいつも視野に入れて活動することの大切さを教えられたように思います。そして、それを研究として科学的に考え、楽しみにさえしてしまうところに米国の力を見た気が したのですが、いかがでしょうか。
ヨコピ-の子育て知恵袋
<カンのムシ>
生まれてまだ一年に満たない赤ちゃんが、まるで気でも狂ったかのように激しく泣いて、いつまでも泣き止まなかったり、時には泣き入りひきつけを起こしたりします。また、夜泣きをしたり、キイキイという奇声を発したり、幼児期になってもちょっと気に入らないことがあると地団駄をふんで泣きわめいたりで、扱いにくいことが多いものです。それだけに、何とかしてこれを治す工夫がないものかと考えるのはごく自然のことですが、短期間に子供の性格を変えることは至難の業です。治すことをあせるより、うまくつき合うことを考えたほうが賢明です。つき合い方はひとりひとり子どもによって異なり、それぞれの場合によっても違うと思われますが、親の側まで感情的にならずに、気持ちにゆとりをもって静かに見守る心がけが大切だと考えます。もともとカンの強い子は鋭い感受性をもった子どもでありますから、この優れた特質によって、将来、普通以上に優れた人物に成長することを期待してみてはいかがでしょうか?
ホームケア-おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
おたふくかぜは、耳下腺が腫れて痛む全身的な病気です。3歳以上の幼児や学童に多くみられます。
《原因》
ムンプスウィルスに感染して発病します。潜伏期間は16日~18日、感染期間は発病の数日前から耳下腺の腫れが引くまでの7日~10日です。感染しても発症しない子が約1/3あります。
《症状》
耳下腺(耳の下の付け根の回り)が腫れて、頭痛や食欲不振、食べた時の痛みを訴えます。腫れは発病して3日目くらいで最大になり、左右が時間をおいて腫れることもありますが、全体の約25%の子は片側の腫れだけで済んでしまいます。また、顎の下の顎下腺も同時に腫れることが多く、「お多福顔」になるわけです。腫れる期間は、個人差がありますが、約1週間です。熱は一時的に40度近くになることもありますが、だいたい3~4日で落ち着きます。合併症として、強い頭痛や吐き気を伴う髄膜炎が数%にみられます。また、まれに睾丸炎や卵巣炎、膵炎を起こす子どももいます。難聴も頻度こそ少ないのですが、重大な合併症の一つです。
《治療》
有効な薬は無く、高熱や耳下腺の痛みには解熱鎮痛剤を使用します。また、予防にはワクチンがあります。
《家庭でのケア》
安静にし、高熱時には水分を補給して脱水症状を防ぎます。口を開けるのがつらいので、スープや果汁、ヨーグルト、ゼリーなど、かまないで流し入れることができる食べ物を与えるのがよいでしょう。酸っぱいものは唾液を分泌する時に耳下腺が痛むのでひかえます。合併症を見落とさないことがもっとも大切です。
くり返し耳下腺を腫らす子どもがいます。これは、反復性耳下腺炎という病気で、唾液を送る管に問題があることが多く、短期間で治り他へは感染しません。
おすすめの絵本(紹介:おはなしたんぽぽ)
せんろはつづくよ
M.W.ブラウン 文 J.シャロー 絵
与田準一 訳 岩波書店
2台の小さな機関車が、男の子と女の子を乗せて西へ向かって出発しました。長い長い旅の始まりです。野を超え、山を超え、トンネルをくぐり、橋を渡り、「ぱふぱふちゃぐちゃぐ」とリズミカルに走り続けます。旅の先々では色々な場面が、旅への興味を駆り立てます。どこまでも続く線路の先には大きな青い海が待っていました。疲れたけれども楽しい長い旅を終え満足感でいっぱいになることでしょう。
スタッフ紹介-塩澤美由紀
皆さん、初めまして、こんにちは。5月から新しくスタッフに加わった看護師の塩澤です。出産、育児のため以前勤務していた病院を辞め専業主婦をしていました。子どもが保育園に入れることになり、横田小児科医院で働かせてもらうことになりました。
住まいは栢山にあり、夫と子ども2人(2才と5ヶ月)の4人で暮らしています。私は、生まれも育ちも小田原です。静岡県にあった看護学校にも実家から通学していました。そんなことで小田原にも詳しい(?)です。また、私の子どもの頃のかかりつけ医も横田小児科医院でした。時を経て、横田小児科医院で働くことができ、とても光栄に思っています。私の子どもも小さいので子育てには楽しいこともたくさんありますが、悪戦苦闘しております。看護師としてだけでなく、私も子どもたちやお母さんたちと同じ目線で関われたらいいな、と思っています。至らない点も多いと思いますが、がんばりますのでどうぞよろしくお願いします。