院内報
こあら通信 第59号 2003 March
目次
・小児科医が足りない
・ホームケアアドバイス-溶連菌感染症
・ヨコピ-のQ救箱
・おすすめの絵本
・お知らせ
小児科医が足りない
梅が満開になり、インフルエンザも衰えをみせてきました。一方でスギの花粉が飛び始め、花粉症の方には憂うつな季節になっています。
子どもの救急の話題がしばしば取り上げられるようになって、小児科医が不足していると盛んに報道されるようになりました。病院に勤務する小児科医は過酷な当直を強いられ、病院の経営者からは売り上げが少ないと突き上げられ、仕事が忙しいために受診する患者さんからは対応が悪いと非難されます。しかも診療報酬が低いために他の科の医師に比べると給与が低く、そのために小児科医になろうとする若い医師が少なくなり、ますます悪循環に陥っていくのではないかと心配されているのが現状です。
小児科医の働く環境が悪いということは、よく考えてみると子どもたちが大事にされていないということなのだと気がつきます。小児科医は小児の診療報酬の引き上げに今までそれほど積極的ではありませんでした。それは、子どもを育てている世代は経済的にも苦しい人が多く、生活を圧迫することを気の毒だと思っている小児科医が多かったからです。そのためにも小児医療費の助成を拡大するよう訴えていますが、わずかな財政投入であるにもかかわらずなかなか実現しないのは、やはり本当に子どもを大事だと考えていないからだというほかありません。
小児科医は小さなおとなを診る科ではありません。「育つ」という子どもの特性を理解し、心から子どもの健康を願って仕事をしているのが小児科医です。様々な小児科医の団体が、小児医療の改善を訴えていますが、その声は小さく、世の中を動かすことができません。
私の願いは、保護者の方々が小児科医の待遇改善のために力を貸してくれることです。それは、とりもなおさず自分の子どもを守ることになるからです。近いうちに選挙が行われる地域が多いですが、真に子どものことを考えてくれる候補者を選ぶことも大切なことの一つではないかと思っています。
ホームケアアドバイス-溶連菌感染症
《原因》
溶血性連鎖球菌(溶連菌)という細菌が原因で、唾液などによる飛沫感染でうつります。潜伏期間は2~3日で、幼稚園や小学校で集団発生することがあります。最近は外来で短時間で検査できるようになり診断が早く確実になりました。
《症状》
のどの痛みが強く、熱が出ることが多いです。小さい子は吐くこともよくあります。赤く細かい発疹が首や胸のあたりから全身に広がることもあります(猩紅熱とも呼びます)。数日するとイチゴのようなブツブツした赤い舌になり、治り際に指などの皮がむけることもあります。免疫は十分にはできないので、家族などに感染して同じような症状が出ていたり、何度も繰り返すときは家族全員で治療することが必要な場合もあります。
《治療》
溶連菌は抗生物質が非常によく効く病気です。伝染する病気ですが、2日間抗生物質を飲むと、他の人へ感染することはなくなります。数日で内服を中止すると症状がぶり返すことが少なくありません。溶連菌に感染してから2週間くらいして発症する、合併症の急性腎炎やリウマチ熱を予防するためには10日から14日間薬を飲むことが効果的です。薬が終わってから3~7日後に尿検査をして合併症が起こっていないかチェックします。症状が良くなったからといってすぐに薬はやめず、医師の許可があるまで飲み続けるようにしましょう。発疹はかゆみがありますが、自然に消えます。
《ホームケア》
全身状態が良ければあまり生活の制限はありません。抗生物質がすみやかに効くことが多く、1~2日で普通の生活に戻れます。家族は予防のためにうがい、手洗いをしましょう。発疹はあたたまるとかゆみが強くなるので、あたためすぎないように気をつけ、爪を短く切りひっかかないようにしましょう。
ヨコピ-のQ救箱
Q. 体温がうまく測れません。どうすればよいの?
A. 子どもの体温は大人より少し高めなんだ。個人差もあって、測定する体の場所、使用する体温計、時間帯(朝は低く、夕方から夜は1度くらい高くなります。)などによっても違ってくるから、日ごろからその子の平熱を知っておくことが大事だね。水銀計をわきの下で10分間計ったものが正確な体温と定義されているんだ。わきの下にはさむ電子体温計は短時間(約1分)で計れて、手軽だけれど、水銀計と比べると少し高目にでる傾向があるよ。耳温計は耳の中に体温計の先端を入れ、1-3秒で計れるから体温計が嫌いな子には便利だけど、鼓膜温を計るため耳垢が多いと正確に計れないことも知っておいてね。運動や入浴、食事などで体温は上昇するので、どのような体温計を使う場合も、体温を計る前には安静を心がけてね。
おすすめの絵本(紹介:おはなしたんぽぽ)
「ちいさいおうち」
岩波書店
バージニア・リー・バートン 作 いしいももこ 訳
この「ちいさいおうち」は、きっとどこかで出会ったことのあるお馴染みのお話ではないでしょうか。いなかの静かな所に建てられたはずのちいさいおうちでしたが、みるみる都会の喧騒の中に埋もれて、しょんぼり・・・。
でも、また自然がいっぱいのいなかに帰ることが出来て静かで穏やかな気持ちに・・・。
ていねいに描き込まれた絵とテキストで時間の流れや自然の移ろいなどもお子さんといっしょに、もう一度楽しんでいただきたいものです。
お知らせ
1. 高橋先生の後任として、4月から安戸先生が来ていただけることに なりました。今後も土曜日月2回のペースでアレルギー外来を行い ます。詳しい日程は3月中に発表いたします。
2. 事務を担当していた宍戸さんが3月に退職されることになりまし た。その後任として伊藤さんと長谷さんが新たにスタッフに加わり ました。
3. 看護学校の学生さん(米山さん、中舘さん、村尾さん、滝田さん) が夕方と土曜日に手伝いに来ていただいています。
新旧スタッフが力をあわせ、横田小児科医院をより良いクリニックにするためによりいっそう努力していきますのでよろしくお願いいたします。