院内報
こあら通信 第326号 June 2025
百日咳の流行
昨年末から流行がみられていた百日咳の感染者数が今年に入り全国的に急増しています。昨年の年間患者数は4000人程度だったのが、今年は4月の時点ですでに1万人を超えました。
百日咳は百日咳菌が原因となって起こる感染症です。潜伏期間は通常7~10日間程度で、風邪症状で始まり、次第に咳の回数が増えていきます。その後、連続した短い咳が続いた後に息を吸い込むとヒューッと笛のような音がする発作性の激しい咳が出るのが特徴です。2〜3週間程度で次第におさまっていきますが、「百日咳」という名の通り100日くらい咳が続くことがあります。
全ての年齢層でかかる病気ですが、乳児、特に生後3ヶ月未満は無呼吸発作やけいれんなどを起こすことがあり、入院率や死亡率が高いので注意が必要です。ワクチンを接種している子どもや大人は比較的症状が軽いことが多いので診断や治療が遅れて知らない間に周囲に感染を広げてしまうリスクがあります。菌そのものよりも菌が産生する毒素が長引く咳の原因なので、早い段階で抗生剤の治療を始めれば、急性期の症状を軽くすることができますが、治療が遅れると効き目は弱くなります。
また最近は耐性菌が増えていて、これまで効果があった抗生剤が効かない報告例が増えているのも問題点です。
感染を防ぐためにはワクチン接種が重要です。百日咳は2ヶ月から始まる5種混合(2024年4月以前は4種混合)が有効ですが、免疫力は長くは続かず、小学校に入るころには抗体価が下がることがわかっています。実際に今年の感染者を年齢別で見ると10〜19歳が60%、次いで5〜9歳が20%を占めています。そのため、任意接種になりますが、就学前もしくは定期接種である2種混合の時期に3種混合を接種することをお勧めしています。
日本産婦人科学会は妊婦さん(妊娠27週〜36週)に3種混合を接種することで赤ちゃんの重症化を防ぐ母子免疫ワクチンを推奨しています。接種をご希望の方はご相談ください。