院内報
こあら通信 第272号 December 2020
目次
・一年を振り返って
・起立性調節障害
・困ってしまう赤ちゃんの泣きについて
・3種混合ワクチン予約再開!
・編集後記
一年を振り返って
今年も残り1ヶ月となりました。新型コロナウイルスに翻弄された1年でしたが、無事に新しい年を迎えることができそうでほっとしています。新型コロナ以外に大きな病気の流行もなく、子どもたちにとっては心配の少ない状況です。ただし、マスクを着用し密接を避ける生活の連続が、子どもの成長にどのような影響を及ぼすのかが気になります。
この1年間、私の人生にとって大切な人たちをたくさん失いました。昨年末には大学の恩師であり私たち夫婦の仲人でもあった小林登先生が亡くなりました。「子どもは未来である」という言葉を残した先生で、小児科学だけでなく育児に関することもたくさん教えていただきました。今年の夏には私が理事長を務めている日本外来小児科学会の創設者の一人である徳丸實先生が亡くなりました。徳丸先生との出会いは非常にインパクトが大きく、父のあとを継いで開業しようと思うきっかけにもなりましたし、開業小児科医の理想像として目標にしていた先生でした。他にも、医師会の先輩、大学の医局でお世話になった先輩、日本外来小児科学会の仲間など、本当に多くの方が亡くなりました。楽しいお付き合いをさせていただいただけではなく、「人生」を教えていただきました。晩年は現役を退いている方が多かったのですが、コロナ禍でお別れに出向くこともできなかったのが心残りです。
いつかこの世を去るのは定めです。そのことを忘れずに今を一生懸命生きることが大切だと改めて思います。子どもたち、そして若いご両親には、目標をもって、全力を出して生活してほしいと願います。「少年老い易く学成り難し」という言葉の重みをしみじみと感じるこの頃ですが、来年も頑張って診療を続けますのでよろしくお付き合いください。
起立性調節障害
起立性調節障害は「朝なかなか起きられない」「体がだるい」「お腹や頭が痛い」「吐き気がする…」など症状は様々です。子どもから大人へ心や体が変わっていく、第二次性徴期と言われる小学校の高学年から高校生に多い病気です。
人がどんな姿勢でも、全身にくまなく血液がめぐるように働くのが自律神経です。この病気の人は自律神経のバランスが乱れてしまい、急に立ち上がった時などに、血液が下半身に集まり脳に血液が行かなくなることで立ち眩みや動悸が起こります。その他精神的・環境的要素も関係していると言われています。午前中は調子が悪く、午後になると徐々に回復するのも特徴です。
下記の項目に3つ以上の該当は、起立性調節障害の可能性があり、生活に支障がある場合は受診をお勧めします。
□立ち眩みやめまいがある □顔色が悪い
□立ち上がった時に気分が悪くなる □食欲不振
□倦怠感がある □腹痛
□動悸や息切れがある □頭痛がある
□朝なかなか起きられない □乗り物酔い
□入浴時や嫌なことがあった時に気分が悪くなる。
<家庭や学校で気を付けること>
・規則正しい生活(早起き・早寝・朝ごはん)
・病気の状態を保護者や学校の先生も理解する
・適度な運動
症状によっては、血圧をあげる薬や様々な症状を軽くするために漢方薬を使用することもあります。
症状の程度により長引くこともありますが、成長とともにしだいに良くなります。
心配な場合はかかりつけに相談を。
困ってしまう赤ちゃんの泣きについて
赤ちゃんの泣いている理由がわからず、心配になったり途方に暮れてしまうことはありませんか?赤ちゃんが泣く理由には「お腹がすいた」「眠い」「おむつが汚れた」「寒い・暑い」「さみしい」など様々な理由があります。まずは今の状態(空腹・眠い・おむつ・暑い・寒いなど)を確認しましょう。次に赤ちゃんの環境を変えてみます。赤ちゃんの気分が変わり泣き止むことも多いものです。抱き方を変え歩く・お風呂に入れてみる・太陽や風の当たるところ(窓を開ける・ベランダに出る・散歩・ドライブ)に連れて行ってみましょう。生後2週間頃~5か月頃までは理由もなく泣くことも珍しくありません。親を悩ませる赤ちゃんの泣き行動の特徴を示す6つの徴候の頭文字をとって「パープル・クライング」とも呼ばれています。そんな時は「無理に泣き止ませようと思わないようにする」ことも大切です。元気な赤ちゃんは泣き過ぎたからといってどうにかなってしまうことはありません。焦らずに「あなたの感情にお付き合いしますよ」という気持ちで「そうだね」「わかるよ」「大丈夫」などと声をかけてあげましょう。時には赤ちゃんを安全な場所に寝かせ、その場を離れてひと息いれてもいいです。具体的に何かはわからないけれど、赤ちゃんの様子がいつもと違う気がする時は体調を崩しているのかもしれません。そんな時はかかりつけの小児科を受診しましょう。赤ちゃんがなかなか泣き止まないときは、誰でも悩んだりイライラしたりすることはあります。小児科は病気を治すだけでなく子育て全般の相談ができるところです。困った時は医師だけでなくスタッフにも声をかけて下さいね。
3種混合ワクチン予約再開!
ワクチンの供給不足により予約を停止しておりました3種混合(DPT)ワクチンの予約を再開しました。このワクチンは「百日咳」の予防が目的です。生後3か月から4種混合ワクチンを4回接種していますが、この抗体が5~6歳になると低下することが分かってきており、小学校入学後に発病するお子様が多くみられるようになりました。小学校入学後はしばらく予防接種を受ける機会もなくなるため、入学前の接種をお勧めしています。また11~12歳で接種する二種混合(DT)ワクチンには百日咳ワクチンは含まれていないため有料になりますが、代わりに3種混合ワクチンを接種することもお勧めです。このワクチンの接種に年齢制限はありませんので気になる方は受付までご相談ください。
編集後記
今年も1年こあら通信にお付き合いいただきありがとうございました。見えぬ敵だった新型コロナウィルスも少しづつ正体が分かりはじめ、この敵とどのように対峙していくかが来年の課題でしょうか。正しい情報を発信し、皆様の不安を払拭できるクリニックであるようにスタッフ一同頑張ります。