院内報
こあら通信 第222号 October 2016
目次
・ラオ・フレンズ小児病院
・薬との付き合い方
・日本外来小児科学会に参加して
・待合室インフォメーション
・お知らせ
ラオ・フレンズ小児病院
9月のシルバーウィークにお休みをいただき、日本外来小児科学会の友人小児科医4人といっしょにラオスのルアンパバーンにできた小児病院を見学してきました。ラオスはアジアでも貧しい国の一つで、昔ルアンパバーンには王宮がありユネスコ世界遺産にも登録されています。
この病院は「フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダー(フレンズ)」というアジアの恵まれない子どもたちの医療支援を行う、日本人が創設した団体が作ったもので、「医療+教育+予防」が活動の理念です。フレンズは1999年まずカンボジアのアンコールワットの近くに小児病院を作りました。私は2007年、デング熱が大流行のときにこの病院を見学しました。この小児病院は運営が軌道に乗り、2012年運営を現地の人に任せて、ラオスに新たな小児病院を作ることになったのです。
病院は昨年2月にオープンし、昨年8月から入院病棟、今年の8月から手術室がオープンしたばかりです。入院している子どもの食事は家族が自炊、感染症の隔離もまだできていません。何よりも問題になるのが栄養失調です。十分な食料がないだけでなく、精霊信仰が強い種族もあって出産後母が1か月もほとんど食事を摂らないことが習慣になっている地域もあるそうです。そのため、重症の脚気(ビタミンB1欠乏)になる赤ちゃんが後を断ちません。山奥に住み病院に通えない栄養失調の家族の訪問にも同行しましたが、考えさせられることがたくさんありました。四駆の車と舟を使って3時間くらいかかる地域ですが、案内してくれたフレンズの代表で看護師の赤尾和美さんの活動にもいろいろなことを学びました。
ぜひ一度ホームページを訪ねて下さい。http://www.fwab.jp
薬との付き合い方
お子さんが、薬を嫌がる・飲まない・飲んでも戻してしまう・決められた回数が飲めないなどといった経験はありませんか?
せっかく受診してお薬をもらったのに…と思ってしまいます。大人は薬を飲むことで、症状が和らいだり、良くなることを知っているので、子どもにも薬をのんでもらいたい、飲ませたいと考えてしまいます。 そんな保護者の疑問にお答えします。
・集団生活で決められた回数の薬が飲めない・・・1日3回の薬は4時間、1日2回の薬は6時間あければ内服できます。例えば 1日3 回の場合、昼分は退園時に飲ませ夜分は寝る前 に飲ませることができます。
・薬を嫌がる・・・嫌がる子どもの中には、シロップは嫌だが粉は飲める(逆も言える)ということがあります。ほとんどの薬は変更できます(ただし抗生剤は粉のみです。)大きいお子さんには錠剤に変更もできます。お子さんの飲みやすい薬の形状にすることも工夫の一つです。
・薬を飲まない・飲んでも戻す・・・嫌で全く飲めない・吐いてしまうときはご相談ください。お母さんでは飲まないけどスタッフが飲ませると大丈夫ということもあります。薬剤師・看護師に声を掛けてみてください。
薬のほとんどは、特効薬ではありません。飲んだからといって症状が治るとは限りません。
薬を飲むことと合わせ、おうちでのケアも大事です。
日本外来小児科学会に参加して
8月26日~28日に香川県高松市で日本外来小児科学会年次集会が行われ、先生とスタッフ5名が参加してきました。
「アナフィラキシー症例が発生したら」アナフィラキシーのお子さまがでた場合の、スタッフの対応の仕方を改めて学んできました。研修の中で実際に人形にエピペンを使用した時の感覚も体験できました。思っていた以上に衝撃があり驚きました。経験したこと、研修してきたことをエピペン処方されているご家族と共有していけたらと思います。 (小長谷)
「見直そう、予防接種技法」このワークショップでは、全国から20名の看護師が参加し、予防接種手技、介助法、説明方法、声掛けなど、各病院(医院)で実際どんな風に行っているかを発表しあい、それを評価したり情報交換して学びを深めてきました。今回学んできたことをいかして、患者様に予防接種をしっかり受けてもらえるような説明や、スムーズにできるような介助をしていきたいと思います。 (岩本)
「院内報で広がる情報の輪をつくろう!~院内報作成の魅力~」というWSに参加しました。患者さんとのコミュニケーションの一環として院内報を活用していきたい…と、全国のクリニックの皆さんと意見交換をしてきました。こあら通信が皆さんのお役に立ち、先生やクリニックからのメッセージを伝えるヒントを得ることができたと思います。先生スタッフ一同、楽しんで発行を続けることがこあら通信の醍醐味!(先生談)と再認識をし、今後も頑張っていきたいと思います。 (高田)
今回初めて学会に参加していろいろな予防接種の講演を聞いてきました。10月から新たに定期接種に加わるB型肝炎について、母子感染のイメージが強かったのですが唾液や汗や涙などからも感染するため園や学校のあそびの中でも十分可能性があること、目に見える症状が出ないので気付けないことや大きな病気にも繋がることなど、改めて怖さを知り予防接種の必要性の再確認ができました。まだまだ対象年齢の幅は狭いですが、未接種の子達にも勧めていきたいです。(橋立)
病児保育室の現状と未来について話を聞きました。国は今後5年間で今の3倍の子ども達が病児保育室を利用できるように計画を立てているそうです。保護者の方が病児保育室を今より利用しやすくなるのは望ましいことですが、どんな時でも預かる側は、感染の防止や保育の充実など子どもの安心、安全について初心を忘れず心がけていかなければならないと改めて考えさせられました。行政や他の機関との連携を含め、これからも「ジャンボ!」と共にできる子育て支援の可能性を探っていきたいと思います。 (小笠原)
待合室インフォメーション
「ママのスマホになりたい」を置きました。今、小児科医の先生の間で話題になっている本です。スマホに夢中になってしまうママに振り向いて欲しい男の子の気持ちを描いた本です。
お母さんがスマホに気をとられている間に起こる事故の報告や、小さい時からスマホに触れる危険性に日本小児科医会は警鐘を鳴らしています。ぜひ一度読んでみてください。
お知らせ
1. B型肝炎 ~定期接種開始です~
今年度当初から話題であったB型肝炎の予防接種がいよいよ10月1日から始まりました。4月1日以降生まれで接種をお待ちになっていたお子さまは10月中に1回目を接種しないと1歳未満で3回の接種を終了できない場合がありますのでご注意ください。
2. はしか注意報
本年のはしか患者がすでに昨年の2倍と報告されました。千葉で行われたコンサートや、多くの人が行き交う関西国際空港で若手の職員がかかり、感染が拡大したとみられています。平成27年3月、日本は世界保健機関(WHO)に土着の麻しんウィルスがない排除状態になったと認定されています。現在の流行は、中国や東南アジアなどに渡航した人によって持ち込まれたとみられています。1歳未満で麻しんの予防接種をまだしていないお子さまをお持ちのご家庭では不安に思われることがあると思います。ただ、生活拠点が小田原近辺であれば接種を慌てたりすることはありません。推移を見守りましょう。