院内報
こあら通信 第220号 August 2016
目次
・選択と共生
・夜尿症
・メディアとの付き合いを考える
・待合室インフォメーション
・全国病児保育研究大会に参加して
・お知らせ
選択と共生
7月の参院選では多くの小児科医の期待を背負って立候補した自見はなこ先生が比例代表で当選しました。国政の場で日本の子どもたちのために頑張ってくれることを期待しています。
今年もまた夏休みがやってきました。蝉の声が急に聞こえるようになったと思ったら、庭のケヤキにアブラゼミをみつけました。アブラゼミは6年間くらい地中で生活し、時期が来ると晴れた日の夕方地上に出て樹に登り、羽化して成虫となり、長くても1か月以内に交尾・産卵をして生涯を終えます。卵は翌年の梅雨の頃に孵化し、幼虫は1回脱皮して地中の生活に入るのだそうです。不思議な一生ですね。
「バカの壁」で有名な解剖学の養老孟司先生のお話を、今年聴く機会がありました。昆虫好きで有名な養老先生は、蝶のように幼虫→さなぎ→成虫と完全変態する昆虫は、一つの生物だと思えないと言うのです。蝶の祖先が別の昆虫に遺伝子を組み込ませて、こんな面白い生態になったに違いない・・と。
進化論の世界では、強いもの、環境に適したものが「選択」されて生命の歴史が作られているとしていますが、養老先生は変態する昆虫を例にあげ、「選択」だけでなく「共生」で進化してきた生命があるはずだ、と話していました。
日本の山林には驚くほどたくさんの動植物が生きていて、その協働作用で良い状態が保たれています。すべて刈り取って杉の林を作ると生態が大きく変わってしまいます。抗生剤をむやみに飲むと、100-1000兆個ある腸内細菌の状態が変わっていろいろな問題が起こることも近年わかってきました。人間の世界も、強いものだけが勝ち残るのではなく、互いに利益を分かち合う「共生」の意味を考えてみることも大切だと思います。
夜尿症
夏休みは、旅行や帰省、合宿など、お泊りで出掛ける機会が増えます。そんな時、気になる「おねしょ」。生理的な発達からみると、おねしょをしなくなるのは5歳過ぎです。5~6歳を過ぎても月に平均1~2回以上、おねしょする場合を「夜尿症」と言います。夜尿症は「夜間の尿量が多い」「夜間の膀胱容量が小さい」という2つのタイプがあり、どちらか1つ、又は両方のタイプが生じて起こります。タイプに合わせたお薬を使用し、症状を改善することが出来ます。お薬を使用するだけでなく、生活習慣を見直すことも大切です。本人だけでなく家族が協力して、お子さまの「治そう」という意欲を引き出しましょう。夜尿がなかった朝はたくさん褒め「必ず治る」と自覚させます。お子さまの年齢や夜尿の頻度などにより、夜尿症の治る時期は異なります。治療が長期になることもありますが、焦らずに治療していきましょう。「夜尿症かも…」と悩んでいる方は気軽にご相談ください。
<家庭でできる夜尿症対策>
・夜中に起こさない ・あせらない ・(失敗しても)叱らない
・規則正しい生活習慣(早寝早起き) ・夕食後の水分制限(塩辛いものを控える)
・お子さまの「治そう」という意欲(これが何より大切です‼)
メディアとの付き合いを考える
7月21日小田原市の保育施設で働く人向けに講習会が開かれ、横田先生と一緒に当院スタッフも参加してきました。講師は日本小児科医会理事、内海裕美先生です。泣いたり、グズッたりする子どもに、安易にメディアを利用した子育てに危機感をもってお話をされていました。乳児期には肌を、幼児期には目を、学童期には手を、思春期には心を離さず、子どもの発達には手をかけることが何より大切といった言葉が胸に響きました。大人がいつもスマホを片手にしていてはこれらのことはできませんね。よく食べ、眠り、体を使ってたくさん遊ぶことが、子どもの成長には何より大切と再認識しました。日本小児科医会は子どもとメディアの問題に対する提言を2004年に出しています。メディア漬けになっていないか見直してみてはいかがでしょうか。ご希望があれば参考資料を差し上げますので受付にご相談ください。メディアから離れお子さんと遊ぶ楽しい夏休みにしてみましょう。
待合室インフォメーション
今月の待合室の絵の作者は藤田達朗さんです。海・森・雲・空など自然をダイナミックに描くこともあれば、動物をコミカルなタッチで描くイラストはデザインに起用され人気があります。疑問に思ったことはすべて言葉にする藤田さんの趣味は、質問攻め…です。
いつも素敵な絵を届けてくれる「アール・ド・ヴィーヴル」さんからのご案内です。障がいのある人たちが自ら選択し自分らしく生きることを追求できる場を目指して、本年3月に小田原市久野に事業所を設立しました。アートを中心とした活動を行っています。現在メンバー(障がいのある方)募集中です。
障害福祉サービス事業所「アール・ド・ヴィーヴル」
電話:0465-25-4534
全国病児保育研究大会に参加して
7月17日、18日に新潟で全国病児保育の学会が開催されスタッフ4名も参加しました。
「こどもみみ・はな・のどについて」という講演を聞きました。この中でおたふくかぜによる難聴について興味深い話がありました。わが国では1000人に1人の割合で難聴になり、特に感染し無症状でも難聴になってしまう子どもがいることに驚きました。ワクチンを接種することで防ぐことのできる唯一の感音性難聴だということも知りました。(松井)
ワークショップでは普段なかなかできない他の病児保育室の方々と色々なお話ができ、とても充実した時間となりました。講演等を聞いて改めて気付くこともあり、自分の保育の見直しや今後のJAMBO!に活かしたいと思います。(土屋)
保育看護について学び、看護師と保育士の連携が大切だということに、改めて気付かされました。その時の保育環境に配慮し、お互いに相談し合い、日々の振り返りを大切に、今後もJAMBO!に全力を尽くしたいです。(田村)
『病児保育でも簡単にできる手作りおもちゃ』のワークショップに参加しました。CDコマや紙コップクラッカーなど材料も 100円ショップで買えるものを使い、小さい子でも簡単にできるものから少し難しいものまでありました。 JAMBO!に来た子どもたちと一緒に作れたらと思いました。(岡本)
お知らせ- 注意!!B型肝炎ワクチンの定期接種開始をお待ちのお子さまへ -
10月1日からB型肝炎ワクチンの定期接種が始まります。平成28年4月1日以降に生まれた1歳未満のお子さまが対象です。B型肝炎ワクチンは3回接種が必要で、1回目と1回目の間を4週間、2回目と3回目の間を5ヶ月間、あけて接種することになっています。4月1日以降生まれで現在接種を控え、定期接種の開始を待っているお子さまは、10月中に1回目を接種しないと1歳未満で3回の接種を終了できない場合があります。10月中に必ず1回目接種の予約をおとりください。