院内報
こあら通信 第191号 March 2014
目次
・期待
・お薬のはなし「元気になるために」
・ヨコピー講座「水ぼうそう」
・お知らせ
・編集後記
期待
ソチオリンピックもいくつもの感動を残して終わりました。レジェンドと呼ばれる葛西選手の活躍は、年輩の私たちを励ましてくれました。たくさんの期待を受ける選手たちのプレッシャーもたいへんなものでしょうが、プレッシャーを自分の力に変えることこそ、スポーツ選手に求められているのだと感じます。
さて、当地ではインフルエンザも依然流行しています。毎日似たような症状の子どもたちを診ていると、クリニックに来る保護者の方は私に何を期待しているのだろうかと、改めて考えることがあります。正しい診断をして早く治る薬を出すことを求めている方もいるでしょうし、自分の考えた診断や対処法が間違っていないことを確認するために来院する方もいるでしょう。同じ病気でクリニックを受診しても、それぞれの方の期待には違いがあるのです。
病気を治すのが医師の仕事だと思うのがふつうですが、今までに何度もここで書いてきましたが、私たちが「治した」と実感できることはそう多くはありません。子どもがかかる病気の多くはウイルスの感染症でそれらのウイルスの大部分には有効な薬がないのです。いわゆる風邪薬は対症療法の薬であって、病気を治す薬ではありません。有効でないばかりか、時には病気を悪化させることもあります。病気は子ども自身の力で治っているのです。
もちろん、ふつうのカゼではない別の病気であることを見抜いたり、中耳炎や肺炎といった合併症をみつけ出すことも私たちの大切な仕事です。しかし、ワクチンが進歩し、子どもの基礎体力がよくなっている現代では、そのような合併症さえ多くはなくなってきました。あれほど多かった水ぼうそうも、最近は診る機会がぐんと少なくなりました。
小児科医はもうあまり期待されることがなくなってしまったのではないかと不安に思うこともあります。でも、最近の子どもたちはほんとうに幸せに育っているでしょうか。昔と較べ、失ったものも多いのではないかと思います。子どもが心身ともに健康になるためのアドバイスこそ私たちに期待してほしいし、それに応えられるクリニックでありたいと願っています。
お薬のはなし「元気になるために」
1歳~3歳くらいまでのいやいやの時期を第一次反抗期なんていったりします。人間の成長には本当に大事な時期なのですが、薬を飲ませなければならないときはどうしたらよいか困ってしまう時期です。何かに混ぜて味をごまかしてもほとんどうまくいきません。薬だと分かると口を開けてくれないと相談を受けますが、こっそり何かに混ぜてもごまかせるのは一回だけということが多いようです。味覚も大人より敏感です。本能的に苦いものは毒、すっぱいものは腐っていると判断し吐き出すようになっています。こっそり混ぜたつもりでも何か混ざっていないかよく味わってしまいますので、何かいつもと違う味がすれば、ヨーグルトに混ぜようがアイスに混ぜようが分かります。主食に混ぜるのは危険ですのでやめましょう。
乳幼児が危険を察知するのは信頼する人の表情や仕草で分かるらしいので不安な顔で飲ませる薬は不安な薬になってしまいます。薬は子供の目の前で用意して隠さない。そして「薬を飲んで元気になろうね!」と声かけをしながら薬として飲む。遠回りのようで薬を飲ませる近道なのかもしれません。
自分でやりたがる子には飲ませるのではなく、小さいコップなどに入れて自分で飲んでもらうのも良いかもしれません。何かに混ぜるのも自分でやらせる。ちょっと失敗してこぼしても注意せず、やろうとしたことを褒めると次のやる気を引き出せるかもしれません。
薬によっては飲む時間をずらすことの出来るものもあります。あえて機嫌が悪いときに飲ませるのではなく、少し機嫌が良くなったら飲ませるでも良いかなぁと私は思います。
薬が嫌いな子を少しでも飲みやすくする方法は何種類かありますが、これだけはやって欲しいのは、薬が飲めたら褒めることです。普通に褒めるのではなく、思いっきり抱きしめて激しく褒めてください。褒められるのはうれしいです。特に大好きな家族に褒められるのは頑張ろうという気持ちになります。薬嫌いな子をなくす究極は、そこにあるかもしれません。薬を飲んだらシールを貼ろう!で飲める子もいます。台紙に薬を飲んだらシールを貼る。貼ったら横田先生に見せに行こう!先生はきっと沢山褒めてくれますよ。先生と約束すると頑張れる子もいますのでちょっと約束してみてはどうでしょう?
3回にわたり薬の飲ませ方について書いてきましたが、書いたことはあくまで理想です。実際には無理やり飲ませなければならないことも多いです。嫌がる子に薬を飲ませるのがかわいそうと思われることもあるかもしれませんが、その薬が飲めれば楽になると信じて飲ませてみてください。そして薬について不安があるときは聞いてください。不安をもったまま飲ませないでください。すべてに答えられる訳ではありませんが、保護者の方が安心して薬を飲ませられるように出来るだけわかりやすく薬の説明をしたいと思います。
最後に、お薬キライのよい子のみなさんへ。先生が他の誰でもなくあなたが元気になるために考えてくれた薬です。間違いなく作りますので美味しくないですが、頑張って服用してください。あなたが元気になると、みんなが嬉しいのです。
齋藤(青葉薬局薬剤師)
「水ぼうそう」
水ぼうそうは、水痘・帯状疱疹ウイルスによって起こります。お腹などにかゆみを伴う小さな赤い発疹がでて、半日~2日位で全身(口の中や頭皮、陰部にもでることがある)に広がります。発疹と同時に発熱することもあります。
赤い発疹がやがて水疱になり、2~3日後に乾いてかさぶたになります。発疹が全てかさぶたになるまで、登校・登園ができません。治るまで1週間から10日位かかります。
治療:ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬で治療することができます。かゆみがある場合は、抗ヒスタミン薬や軟膏が追加されることもあります。空気感染するので感染力が非常に強く、発疹の出る1~2日前から発疹がかさぶたになるまで人にうつす可能性があります。潜伏期間が2週間ありますので、感染者と接触してすぐ発症するわけではありません。
予防:ワクチンで防げる病気(VPD)の一つです。満1歳から接種できます。最近は満1歳で1回目を、その後半年から1年後に2回目を接種することを勧めています。発疹だけの軽い病気に思われがちですが、脳炎や皮膚の重症細菌感染などの合併症もあります。いつ・どこで感染するかわからないため、満1歳になったら早めに接種を。まだかかってない子も接種することをお勧めします。
お知らせ
1.予防接種情報
麻しん風しん混合ワクチンの受け忘れにご注意ください。現在年長さんで4月から小学校に上がるお子さんは、3月までに接種しましょう。
肺炎球菌13価ワクチンは、4月から費用が変更になる予定です。自費で接種をご希望の方は、お早めに接種をおすすめします。
2.4月から水曜日も診察します
先月でもお知らせいたしましたが、4月より水曜日も通常と同じように診療します。代診の先生になることもありますので、予約時にご確認ください。
3.7月から病児保育をはじめます
現在、スタッフ(保育士・看護師)を募集しています。興味のある方は受付までご連絡ください。
編集後記
家で車掌さんごっこ、ウェイターごっこを延々と続ける息子に参って、あちこちの園庭解放に顔を出しています。息子は、幼稚園と保育園を「コーエン」と言うようになりました。
枯れ山が紫色を帯びてくると春だなと感じますが、ヨーロッパでは黄色は春を告げる色だそうです。8日は、国際女性デー、ミモザの日。男性から女性に贈られるミモザですが、女性同士でもいいそうですよ。私は日頃の感謝を込めて母に贈ろうかとおもいます。一枝は自分にプチご褒美。そして、子育て、家事、仕事でがんばっている皆さんに心から腕一杯のミモザの花束を。