院内報
こあら通信 第183号 July 2013
目次
・真の平等とは
・発達相談室からの風景Q&A編No.25「不器用です・・」
・ヨコピーの子ども講座-「水の事故」
・スタッフ紹介
・お知らせ
・編集後記
真の平等とは
梅雨空が続き鬱陶しい気分になりますが、サザンオールスターズもデビュー35周年で活動を再開することが決まったし、楽しい夏を期待したいと思います。
さて、7月の参議院議員選挙を前に医師会も独自の候補を立て、選挙戦に臨んでいます。争点の1つは国民に必要とされる医療は何かです。
TPPで協調していかなくてはならない米国において、医療における平等とは、誰でも同じように必要な医療が受けられることではありません。米国では、たくさん税金を納め、私的な健康保険に多くのお金を払った人がより良い医療を受けられることこそが「平等」なのです。加入している保険によって、受けられる医療が違うことは当然なのです。アメリカンドリームといわれるように、誰でも成功してお金持ちになるチャンスがあるのだから、成功しなかった人はそれなりの医療で我慢することが平等なのだと言うわけです。
そうすれば、最先端の医療はどんどん進んで、医療全体がよい方向に進むのだというのが彼らの考えなのだと思います。しかし、この考え方は私たち日本人に受入れられるものなのでしょうか。日本には皆保険制度という、すべての国民が保険に入っていて、誰でも同じ医療が受けられる制度があります。私たちはこれを当然と思っていますが、けっしてそうではありません。ヒラリー・クリントンが米国で皆保険制度を作ろうとして失敗したのは、米国には皆保険制度は不平等であるという根強い考え方があるからで、もちろん保険会社もそれには反対なわけです。
私たち日本人には助け合いの精神が昔からあります。困った人がいたときに、それはお金がないから、ふだん怠けているから…と見過ごすことができないのが日本人の心情ではないでしょうか。私たち日本の医師の大部分は、誰もが同じ医療を受けられることは医療の本質的な部分だと思っていますし、そのように教育を受け育ってきました。医療は単なるビジネスではありません。医療でできることには限界があります。資本主義の強大な力によって皆保険制度が崩され、医療がビジネスとして利用されないよう、皆さんにもしっかり考えてほしいと願っています。
発達相談室からの風景Q&A編No25「不器用です・・」
Q. 4歳児、すごーく、不器用です。お絵かきや折り紙、制作を嫌がります。字にも興味がありません。
A. 制作が苦手なお子さん、いらっしゃいますねー。自分でもうまくできないと思っているから、嫌がるんですよね。周りが見えるようになってきた繊細な4歳児だからこそ、「苦手」を無理強いして、「嫌い」になってしまわないよう、暖かい目で見守ってあげて下さい。心の底では、かっこよく上手にできるお友達や、5歳児さんにあこがれ、「あんなふうにできたら」と思っています。こっそり、自分でもやってみたりします。その時を待って、さりげなくエールを送ったり、できている部分を認めてあげるとよいでしょう。文字への興味は、非常に個人差があります。5~6歳までに興味を持ってくれればいいと、腹をくくりましょう。
ただ、手先が不器用だからと、手先の事ばかり気にしてやらせようとするのではなく、そういう時は、全身を使った粗大運動も、しっかり保障してあげましょう。
体の軸、体躯がしっかりして、平衡感覚や体のコントロールが行き渡り、動体視力など、目から入る情報と体の制御が協応することによって、イスに座ってやる活動にも、落ちついてじっくり取り組めるようになるのです。
手足の動きがばらばらで、何をどう動かすと重心がどうなるのか、自分の体の動きがモニタリングしにくいお子さんには、ジャングルジムや、トンネルくぐり、障害物をよじ登って超えたりする活動がいいですね。リトミックも楽しいですね。
走るのが好きで、運動神経はいいように見えるけど、姿勢の保持がしにくく、じっとしていられないようなお子さんなら、ブランコやトランポリン、バランスボールなど、揺さぶりの入った動きをたっぷりした後、「だるまさんがころんだ」のような、パッと動きを止める活動を楽しむとよいでしょう。平均台や、つり橋を渡るような、集中して体の動きをコントロールさせるのもいいですね。
目と手の協応がうまくいかないお子さんは、球技。ボール遊びや、羽根つきのような遊びもいいですね。ブランコを大きくこいで、目の前に来た時に(柵の外からお願いします)変な顔をして見せたり、指を何本か出して、何本だったか当てさせたりする遊びをしてみてもいいでしょう。動くものをしっかり目でとらえたり、自分が動きながら、しっかり焦点を合わせて「見る」力が付きます。
これら、体躯や身体感覚、視力などの感覚が統合されて来ると、中腰でしゃがんでのままごとや泥団子、イスに座っての活動などもじっくり落ち着いて取り組むことができるようになるでしょう。左右の手の役割分担も、経験を積んで上手になると思います。いずれも、楽しみながら体を動かすことが大事です。
雨があがったら、外に出て、さあ、体をいっぱい動かして遊びましょう!
ヨコピーの子ども講座-「水の事故」
海や川で水遊びを楽しめる季節がやってきました。水遊び中に溺れたり流されたりする水の事故が多くなるのもこの時期です。小さな子どもは、わずかな水でもおぼれます。
水の事故は海やプールで起こるとは限りません。1才代の約8割、2~4才代までの約2割は家の中で起きています。小さな子どもは頭が大きく、足腰がしっかりしていないため、体のバランスを崩して落ちてしまいがちです。水辺ではバランスをとることが下手なので、顔が水についたときに、すぐに体勢を直すことができません。そのため鼻と、口を覆うだけの水があれば数cmの水位でもおぼれてしまいます。事故は浴室、トイレ、洗濯機、洗面器の水、水槽の水などで起こります。
戸外での水の事故が増えるのは行動が活発になる3歳頃からです。水遊びをする時はそばを離れない、目を離さないことを心がけましょう。
水の怖さを子ども達に教え、悲しい事故の発生を防いで楽しい夏にしましょう。
スタッフ紹介
井上さやか(看護師)
皆さんこんにちは。看護師の井上さやかです。以前は小田原市立病院で勤めていましたが、縁あって横田小児科医院で働くことになりました。小児科で働くのは始めてで、まだまだ至らない点ばかりですが、精いっぱい頑張りますのでよろしくお願いします。
住まいは富水で、家族は8人(夫、長女中2、長男小6、両親、弟、ミニチュアダックス)今どき珍しい完全同居です。私も皆さんと同じように、笑ったり、泣いたりしながら子育てしています。お子さん、ご家族の想いに寄り添っていきたいと思っていますので、気軽に声をかけてください。
お知らせ
1. 大人の麻しん風しん混合ワクチン接種希望の方へ
現在、麻しん風しん混合ワクチンが入荷しにくくなっています。ご希望の方は早めに受付までご連絡ください。
編集後記
炭酸の微かに弾ける音が心地よく感じます。最近、息子は外遊びに夢中です。彼にはお決まりの散歩コースがあり、反対側に向かおうとすると、「あ!」と指をさして駅に向かいます。男の子は何で車や電車が好きなのでしょうね。「電車が好き」というと、いつもある男の子の顔を思い出します。もう高学年になったでしょうか?当時、お母さんは定期を作って、あちこちの電車に乗っていたそうです。好きな事に付き合うお母さんの姿勢に共感すると共に、そうありたいと思いながら、明日はどこへ行こうか・・・ま、駅ですね。