院内報
こあら通信 第178号 February 2013
目次
・信頼感
・発達相談室からの風景Q&A編No.20「思春期?心の病?」
・ヨコピーの子ども講座-「外また・内また」
・お知らせ
・編集後記
信頼感
寒い日が続き、インフルエンザにかかる人も増えてきました。毎年この時期に気になるのは「インフルエンザかどうか確かめてください」と言って受診する患者さんです。医師の判断を聞こうとするのではなく、多くの場合「確かめる」というのは「迅速検査をする」という意味で使われています。
インフルエンザではないだろうと思って説明しても、保育園で検査をするように言われたので・・と検査を要求されます。結果が陰性だと「よかった」と喜ばれますが、検査の結果も100%正しいわけではありません。発病からの時間、検査手技の問題、症状の強さなどでインフルエンザに感染しているのに陰性ということもめずらしくはありません。
もちろん医師の判断も同じです。インフルエンザではないだろうと思っても、検査をしてみると陽性だということももちろんあります。医師の判断と迅速検査とどちらが正しい確率が大きいのだろう、と考えたりしますが、問題の本質は「信頼感」なのかもしれません。
保育園が検査をしてくるようにというのは、医師の判断よりも検査の方が信頼できると考えるからでしょうか。インフルエンザを一人残らず診断して、診断したら5日間は絶対に集団生活には参加させないという考え方は間違いではないかもしれませんが、実際には不可能だし、さまざまな例外がどうしても出てきます。明日が受験というときには、インフルエンザでも熱が下がって元気ならば行ってもよいというのが人の道だと思うのです。医療にはさまざまな要素があって、病気そのものの診断が大切なのはもちろんですが、患者さんの状態、家族がおかれた状況、生活上の大切なイベントなどを考えて対応を決めるのが医療です。
受診する人と診る人がともに考え、さまざまな要素を考慮して決めるのが医療の進むべき道で、そこにはお互いの信頼感がなくては成り立ちません。信頼することはある意味で一種の賭けなので、決して簡単なことではありません。最近の世の中このような信頼感が作りにくくなってきたように感じます。他人を信頼することなしに、人は幸せにはなれないように思うのです。
発達相談室からの風景Q&A編No20「思春期?心の病?」
Q.中学生の娘が、イライラして強気にあたってくることが多くなりました。ふさぎこんで泣いているときもあります。受験や、友だちとちょっとした行き違いがあったようですが、日によって態度がずいぶん違います。何か心の病気なのではないかと思うと心配です。
A.受験生とのこと、ご本人も不安やプレッシャーを感じていることでしょう。また、支えるご家族も大変な時期ですね。
子どもの心が揺れていて不安定に見えるとき、それが思春期によくある人生の悩みからくるものなのか、心の病気なのかの判断は、専門家でも難しいものなのです。また、はっきりと線が引けるものでもありません。どちらも入りまじっている年代です。
ただ、その時点でどちらがより多く影響を及ぼしているかによって対処の仕方が変わってくるため、ある程度、状態像の整理は必要です。身体の病気に例えて考えるとわかりやすくなるかもしれません。疲れたり、風邪をひいたりして、調子が出ないときは誰でもありますね。そのときは、身体を労わったり手当てをしたりして、回復を待ちます。心のことで当てはめると、人生で誰もが経験する、うまくいかないことや失敗、将来への不安等でイライラしたり落ち込んだりすることに該当します。辛くはありますが、その体験を通して、少しずつ自分を知り、自分を受けいれ、未来の自分を現実的に描くことができるようになる機会ともいえます。したがって、大人としては目先の行動に振り回され過ぎず、気持ちを聞いてあげたり、遠くから見守ったりと応援していることをさりげなく伝えながら、
時期が過ぎて本人が回復するのを待つしかありません。
娘さんの場合は、進路や友人関係で不安や悩みがあり、イライラしたりふさぎこんだりしているようですね。その辛さを言葉でもご家族にお話しできている。今までと同じように眠れていて、食欲もある。別の友達と悩みを話し合ったり、関係のない話をしながら笑ったり、趣味のものに打ち込んだり、といったことで気分転換ができている。そんな様子が見られるようなら、思春期の反応と考えてよいと思います。家庭外では、不安を抱えながら頑張っている分、家では少し甘えが出て、気持ちの揺れをそのまま表現しているので、日によって態度が違ってくるのでしょう。
一方、身体の病気でも、服薬などの治療が必要な病気のときは、やはり症状が悪化しないうちに病院にかかることが必要です。心も同様に考えると、
①あまりに本人が辛そうで、程度がひどい
②勉強や部活に取り組めない、食事や睡眠がうまくとれていない等、生活に支障が出るほどである
③口数が減る、友だちとの交流が切れている
④表情が乏しくなってきている
⑤お風呂に入らない、身なりを整えない
⑥心配な状況が一定期間続いており、回復している様子が見られない
というような状態の場合は、「気の持ちよう」「本人の頑張り次第」だけとは言えない可能性があり治療的かかわりが必要になるため、病院や相談機関にかかることを検討していただきたいと思います。
もちろん、心の病気でなくとも、早めに相談することは有益です。身体の風邪も、こじらせてしまうと大病に繋がる危険があるように、心もこじれる前に、自分で早めに対処したり、予防したりすることは大切です。医療機関では敷居が高いと感じられる場合は、スクールカウンセラー等、身近な相談機関のご利用をお勧めします。
ヨコピーの子ども講座-「外また・内また」
歩いている時に、かかととつま先の直線が進行方向を外れて、つま先が外側に向いている歩き方を外またといいます。(そとわ、がに股ということもあります)歩き始めの赤ちゃんの外また歩きを心配して来られる方がいます。そのほとんどは、生理的な外またです。なぜ、歩き始めの時期に外また歩きが起こりやすいかというと、赤ちゃんの太ももは、外側へ回転しやすく、内側に向かっては回転しにくい性質を持っているからだと考えられています。太ももが外側へ回転すれば、つま先も外に向かいますから、歩き始めの赤ちゃんが外またに傾きやすいのも当然のことなのです。
反対につま先を内側に向けた歩き方は、内また(内輪)と呼ばれています。足の骨のねじれが原因と考えられるもの、O脚、扁平足、足の裏が内側を向く内反足に伴うものなどがあります。しかし、このような内また歩きも、自然に治る傾向にあるようです。中には治療が必要なこともあるので、4-5歳になっても外またや内またが目立つ場合には相談にいらしてください。
お知らせ
1. インフルエンザ流行中
インフルエンザが流行してきました。来院される際には、マスクの着用をお願いいたします。
2. 麻しん風しん混合ワクチン接種しましたか?
現在、年長さん・中学1年生・高校3年生の年齢に相当するお子さんは、公費で接種できるのは3月末までです。忘れないうちに早めに接種を!
編集後記
厳しい寒さですが、暦は春です。曽我の梅林から始まり、菜の花や桜と楽しい季節がやってきます。息子と一緒に歩くのが楽しみでもありますが、もう少し時間がかかりそうです。息子ネタで恐縮ですが、ピアノの上に立って電話機やインターホンで遊びます。「お〜!」と雄叫びをあげる様はチビ怪獣です。立てるようになって世界も広がり、冒険心に共感しますが、その好奇心としつこさにため息が出ます。何かできるまで待てても、「だめ」がわかるまで待てず、私まで怪獣に・・。人間でとどまる為に「砂地にもいつか水は溜まる」と唱えています。