院内報
こあら通信 第163号 November 2011
目次
・ポリオワクチン
・発達相談室からの風景Q&A編No,6「人見知りをしない」
・ヨコピーの子ども講座-「じんま疹」
・お知らせ
・編集後記
ポリオワクチン
朝夕はだいぶ冷え込んできて、秋も深まってきました。ありふれたRSウイルスが急に話題になったり、冬の嘔吐下痢症の原因となるロタウイルスのワクチンがまもなく発売されるなど、感染症の話題が多い中で、また大きなできごとがありました。
神奈川県が地方独立行政法人神奈川県立病院機構とともに、独自に不活化ポリオワクチン接種に取り組むと発表したのです。現在自治体で行われている生ポリオワクチンは、約100万人に1.4人の割合でポリオに関連した麻痺を起こすことが分かっています。一方で、本物の野生のポリオにかかった人は、日本では1980年以降1人もいません。
ポリオがなくなっている先進国では、10年以上前から麻痺を起こさない「不活化ポリオワクチン」へ切り替えが進んでいましたが、日本でもその必要性が認識されながらも対応が遅れていました。このことがマスコミでも大きく取り上げられるようになり、一部の医療機関では外国で使われている(日本では未承認)不活化ポリオワクチンを希望者に接種するということが少しずつ行われるようになっていました。これを神奈川県が独自に行うというのです。
不活化ポリオワクチンは平成24年度の終わりには日本でも導入される予定になっていて、神奈川県はこれを先取りした形です。接種は有料ですが一見よさそうな事業です。しかし問題もあります。日本では未承認のワクチンなので、万が一接種による事故や大きな副反応が起こった際には、定期接種のような健康被害救済制度がありません。一部のクリニックが行っている、きめ細かな説明と同意を基本とした接種が、自治体できちんと行えるのかということも不安です。
最近の全国の生ポリオワクチンの接種率をみていると、95%以上あったものが80%以下まで落ち込んでいるそうです。中国の例をみてもわかるように、ポリオは少数ながらアフガニスタン周辺や中央アフリカに残っており,交通網が発達した現代ではいつ日本に入ってくるかわかりません。従って、接種しないで待っているのも危険です。100万人に1.4人という副反応をどう捉えるかが問題ですが,生ポリオワクチンを接種しておくのが悪くない選択だと私は考えています。
発達相談室からの風景 Q&A編No,6「人見知りをしない」
Q.うちの子は1歳になりますが、人みしりを全くしません。誰にでもニコニコして、愛想のよい子です。それって何か問題なんでしょうか?
A.通常、赤ちゃんは生後5~6か月くらいになると、知っている人と知らない人が分かり、一番身近にいるお母さんや、きょうだいの顔を見て、自分から笑いかけるようになります。(ぬいぐるみやお面には笑いません!)外で知らない人が話しかけたりすると、じっと顔を見たり、抱っこされている時には、くるりと後ろを向いてお母さんにしなだれかかったりするでしょう。
8~9か月くらいになると、身近な親しい人(「第2者」と呼びます。お母さんや、園の担任の先生など。)との愛着が形成されてきて、その人がいてくれれば、お部屋で安心して遊んだり、何か不安なことがあると急いで戻ってきて抱っこを求めたり、急にいなくなるとどこまでもハイハイでおいかけ、トイレにも行けなくなったりする時期がきます。このころがいわゆる「人みしり」が一番はげしくなる時期で、下手に挨拶したり、急に抱っこしたりしようものなら、のけぞって嫌がられたり、盛大に泣かれたり、固まって動かなくなってしまったりします。乳児の保育室では、部屋に入って、目が合ったとたんに大泣きされます。怖ければ見なければいいのに、わざわざこちらを見ては泣くのです。
久しぶりに会ったおばあちゃんにやられてしまうと、お母さんとしては身が縮むような思いをしてしまうところですが、この「人みしり」は乳児期に非常に大切な、こころの発達のあらわれです。安心できる「第2者」が一緒にいてくれるからこそ、子どもは不安だらけの新しい世界にも少しずつ導かれ、「第3者」だった知らないおばちゃんにもすぐに慣れて、一緒に遊ぶことができます。「第2者」が安全地帯としていてくれるからこそ、知らない場所でも自分で探検ができます。「第2者」が一緒に「○○だね~」と共感してくれるからこそ、「ワンワンがいた!」「ボールをポンってなげた!」という一つ一つの事象が意味を持ち、ことばの基礎としてのコミュニケーションの土台が作られていくのです。
「人みしり」には個人差が大きく、全く泣かない子はみんな心配かといったらそうではありません。知らない人だ、と分かっていてもすぐに慣れて問題ない子もいれば、なかなかデリケートな子もいます。ただ、「人みしり」がない子で、いつも身近にいる家族にも全く興味がなく、一人遊びが多かったり、言葉が遅れていたりする場合には、対人関係を結ぶ力や社会性の弱さがないかどうか、1歳半健診などで相談してみることをお勧めします。逆に、あまりに「人みしり」、「場所みしり」が強すぎて、病院や保健センター等で毎回大騒ぎをしたり、同じくらいのお友達がいるところでは全く遊べないという場合も、どうしてもさまざまな経験が少なくなってしまいがちです。同年齢の友達や、子育て支援センター、サークルなどで何度か試してみて、それでも慣れないようでしたら、やはり保健センターや専門家に相談してみるとよいでしょう。少人数で、同じ友達と一緒に少しずつことばの基礎を準備していける教室を紹介してもらい、子のペースに合わせて、この時期を楽しく過ごせるとよいと思います。
ヨコピーの子ども講座-「じんま疹」
じんま疹は、突然強い痒みをともなって出てきます。皮膚が虫に刺されたようにミミズ腫れのように盛り上がるものから、小さなふくらみだけのものまで様々です。大部分は原因がみつけられず、血液検査も役に立ちません。風邪など、体調が悪い時にも起こりやすいことが分かっています。
治療方法としては、抗アレルギー・抗ヒスタミン薬などの飲み薬を中心に、かゆみを沈める抗ヒスタミン薬入りの塗り薬などが処方されることもあります。じんま疹が出ている時は刺激の強い食べ物(カレーやキムチなど辛いもの、チョコレート)は避けてください。体が温まると増えることが多いので、入浴は熱いお風呂は避けてシャワーだけにし、体もこすりすぎないようにしましょう。激しい運動も避け、部屋も暑すぎないようにしてください。体調の悪い時は無理をせず体を休ませましょう。それでもかゆみが強い時は、冷やしたタオルを当てるとやわらぎます。汗で濡れた下着なども刺激になるので、汗をかいたらこまめに取り替えましょう。
出たり消えたりを繰り返し、いつの間にかひいていることがほとんどですが、症状がある時は受診してみましょう。病院に来ると消えていることもあるので、携帯などで画像に残してから受診するのも一つの方法です。
お知らせ
1. 11月5日(土)はテレビに釘付け?横田先生テレビ出演のご案内です
①TVKテレビ 午前9:15~9:30放送
先月お知らせした「げんきなあかちゃんフォーラム2011」の模様が紹介されます。
②BS朝日「医療の現場」午後18:00放送
今年のインフルエンザについて特集です。横田先生をはじめ、予防接種に来院され
た方も取材にご協力いただきました。興味のある方はぜひご覧下さい。
2. 経口(けいこう)ロタウィルスワクチン発売されます
毎年冬になると流行する「ロタウィルス」による胃腸炎ですが、ようやく日本でも発売となりました。初めてロタウィルスにかかると重症化しやすい赤ちゃんに効果的です。詳細はスタッフまでお問い合わせ下さい。
接種対象年齢:6w?24w未満の乳児(24wを過ぎるとできません)
接種回数(※飲むワクチンです):2回 間隔は4週間あけます。
費用:未定(10月末現在)
3. インフルエンザワクチン予約停止中につきご迷惑おかけしております
ワクチンの再入荷次第、予約を再開いたします。HP等でお知らせ致しますので、ご確認ください。
編集後記
先日、渡辺先生によるロタウィルス勉強会を行いました。皆さんと同じように、来月生まれる子どもに、より安全な方法でと願うのは私も同じです。同時接種やポリオに対する一抹の不安もあります。けれども、予防接種なしに、ウィルスの感染を防ぐのはとても難しいでしょう。将来的には、B型肝炎なども世界との差はなくなるだろうというお話でした。今後も、ワクチン情報には目が離せません。さて、これから忙しい時期なのですが、私産休に入らせていただきます。残りのスタッフで奮闘いたしますが、会わせて皆さんのご理解をお願いいたします。