院内報
こあら通信 第159号 July 2011
目次
・女性のがん
・相談室からの風景 「Q&A」編 No.3 「落ち着きがない?」
・ヨコピーの子ども講座-「蟯虫(ぎょうちゅう)症」
・お知らせ
・編集後記
女性のがん
梅雨の真っ只中ですが、意外に雨の日は多くありません。汗疹や湿疹で来院する子どもたちが増え、夏の到来を感じるこの頃です。
先日、日本医師会の生涯教育の一環として「女性のがん」に関する医師向けの講演会が横浜であり、私もワクチンの一般的な注意についてお話するために参加してきました。
特別講師は仁科亜季子さん。東日本大震災後のACジャパンの娘さんとのテレビCMが注目を集めました。私たち世代のアイドルでしたから、もちろん少し心ときめくものがありましたが、それ以上に感じたことが子宮頸がんの問題です。クリニックに通ってくる若いお母さん方にも知ってもらおうと、今回は子宮頸がんの話を書くことにしました。
子宮頸がんは女性のがんとしては20〜30歳代に多いのが特徴で、特に近年は若い世代での発症が急増しています。日本では年間15000人が発病し、3500人の方が亡くなっていますが、この中に20代、30代の若い女性が少なくありません。
このがんはほぼ100%ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で起こることが判っています。HPVには100種類以上のタイプがありますが、子宮頸がんの発症に関係するのは15種類ほどです。接種が始まった子宮頸がんワクチンは、この中で原因となることが多い2種類のHPVの感染を予防するワクチンで、接種することによりこの2種類のウイルスによる子宮頸がんをほぼ100%予防することができます。
一方で、この2種類以外のタイプによる子宮頸がんは予防できませんが、幸い子宮頸がんの進行はかなりゆっくりであることが判っています。前がん状態と言われる状態がしばらく続いてから進行していきますので、毎年検診をしていれば、必ず早期の段階で発見でき、治療も簡単でほぼ後遺症なく100%治すことができるのです。
進行すると命を落とすことがあるばかりでなく、たとえ助かっても子宮を取る手術のために、リンパ管の障害でむくみが続いたり、膀胱の機能がおかしくなったりが一生続くことになります。仁科さんはこの経験を赤裸々に語ってくれました。
信頼できる産婦人科医をみつけ、20歳を過ぎたら毎年子宮頸がんの検診を受けてほしいと心から思いました。
相談室からの風景 「Q&A」編 No.3 「落ち着きがない?」
Q. うちの子は本当に落ち着きがありません。病気でしょうか。
A. 言葉でのコミュニケーションはきちんと取れるお子さんでしょうか?知的発達の遅れや、言葉の遅れ、自閉症などによる興味の偏りがあると、こちらの指示や、今何をすべき時なのかが分からなくて、「落ち着きがない」ように見えてしまうお子さんもいます。その場合は、まずコミュニケーションの力を育てていくことが課題となります。
そうではなく、言葉やコミュニケーションの問題はないのに、なにしろ動きが激しく、エネルギーありあまる元気なお子さんもいます。1歳半健診では、まだまだ、どのお子さんもマイペースですから、それほど問題はありません。ですが、さすがに3歳児健診などで、他の子が静かに座ってお話を聞いていられるのに、一時もじっとせず、部屋の中を走りまわったり、友達や周りの大人たちにちょっかいを出しつづけたりすると、お母さんとしても冷や汗どころではすまなくなってきますね。(^^; 幼稚園に行き始めると、クラスの先生もお友達も大好きなのに、皆と一緒の集団行動がなかなか難しくなってしまうお子さんもいます。
彼ら、注意集中がむずかしいお子さんたちは、視覚刺激や音刺激に弱く、何か興味をひくものがあると、反応せずにはいられません。運動神経がよい子もいますが、中には非常に不器用で、よく転んだりぶつかったり、はさみやのりがうまく使えなかったり、物をなくしたり落としたりといった「失敗」が多い子もいます。下手をすると、園でも家でも、朝から晩まで「叱られっぱなし」になってしまいがちです。子どもさんによっては、「どうせ俺なんか何やったってダメなんだよ!」と開き直って、大人との信頼関係をなくし、ますます言う事を聞かなくなったり、おどおどと、何をやっても自信がなくて、ますます失敗してしまったり。そんな悪循環に陥る前に、まずは、大人側が、対応を変えてみましょう。ちょっと物を拾ってくれた時に「ありがとう、助かったよ」、完成には至らずとも努力しているときに「がんばってるね」、と、普段なら絶対ほめないような事をほめてみる。すると、子どもの表情がパッと明るくなるでしょう。
感情的に叱っている時には、子どもには「叱られた」という記憶は残りますが、では「何がいけなかったのか」「どうすれば良かったのか」は伝わらない事が多いものです。通常のトーンで、具体的な行動の、どこがどういけないのか、どうすればいいのかをシンプルな言葉で教えてあげて、できたら「それでいいんだよ」とほめる、それだけで大人との関係はずいぶん改善します。
中には認知特性に偏りがある子もいますので、詳しい検査をすると、こちらが「こんなこと見れば分かるでしょ」と思っていた事が見えていなかったり、簡単な事でもその子にとってはものすごく努力しないといけなかったりすることが分かって、本当は子ども自身が「困って」いたんだな、と愕然とする事もあります。大人が「困ったな」と思ったら、まずは気軽に相談して下さいね。
ヨコピーの『こども講座』「蟯虫(ぎょうちゅう)症」
日本で最も多い寄生虫です。幼児期から小学生に多く見られ、おもに集団生活の場や家庭内で感染します。蟯虫の卵が手から口に入り(お尻を掻く→手洗いせずに食事する→手についた卵が口に入る)、体内で卵が孵化し幼虫になり、その後成熟した成虫が夜寝ている間に肛門付近に下り卵を生み付けます。お尻をかゆがる事が主ですが、学校・幼稚園・保育園でのセロファン検査でたまたま見つかる事もあります。治療は、駆除剤(コンバントリンなど)を内服します。1回の内服で90%くらいの駆除効果がありますが、念のため2週間後に2回目の内服をする事がよいとされています。駆除されたかどうか、2〜3週間後にセロファン検査を行います。駆除した本人だけではなく、家族全員で内服するほうが望ましいでしょう。感染しないために家庭で気をつけるのは、爪を短く切り、排便後・食事前には必ず手洗いをする、毎日入浴する、下着や寝具をいつも清潔に保つ、などのことです。
お知らせ
1. 駐車場を利用される方へ「駐車時には車のサイドミラーを閉じて!」
患者さんからご意見を頂きました。特に医院下の駐車スペースが狭いため、ご不便おかけしておりますが、皆様の事故防止の為、ご協力お願いいたします。
2. 「日本脳炎ワクチン」定期接種年齢の対象者が拡大
特例対象は、平成7年6月1日〜平成19年4月1日生まれの方です。接種し忘れてしまった方、経過措置で接種を見送っていた方は、ご連絡下さい。※例)現在8才で、Ⅰ期追加を接種していない方も、接種できます。
3. 子宮頸がんワクチンの入荷状況について
現在、ワクチン製造が間に合わず、公費接種対象者は現在高校2年生の方に限られています。その他の方は、もうしばらくお待ち下さい。※ワクチン接種ご希望の方は、まず、ワクチン待ちの登録をお願いいたします。ワクチンが入り次第、ご連絡さし上げます。
4. 院内節電にご協力お願いいたします
暑い季節になりましたが、節電の為、ご理解をお願いいたします。念のため、受付に”うちわ“を用意いたしました。ご利用ください。
編集後記
梅雨あけのこの暑さ。今年程、ほどほどにしてほしいと願わない年はありません。規則正しい生活、食事、水分などに気をつけて、なんとか乗り切ってほしいと思います。「治療するより、予防する。」このようなフレーズは、生活習慣病、歯科、認知症等で聞きますし、小児科でも後遺症や重篤な症状になる前に予防接種で防ごうという動きになっています。子宮頸がん、乳がん検診も積極的に勧められています。婦人科検診にはためらいもありますが、健康である時程、自分の体を思いやる意識に欠けてしまいます。どうぞ、あなた自身の体も大切になさってくださいね。