院内報
こあら通信 第157号 May 2011
目次
・節約
・相談室からの風景 「Q&A」編 No.1
・ヨコピーの子ども講座-「起立性調節障害」
・編集後記
東北関東大震災
東日本大震災に夢中になっているうちに、今年の桜の時期も終わってしまいました。一方で新学期が始まり、子どもたちは期待に胸を膨らませて保育園や幼稚園、学校に通い始めています。震災の影響は想像以上に大きく深刻ですが、時間は止まってはいません。日本全体の復興に向けて、皆が力を合わせて進む時期に入ったように感じます。
支援物資を送ろうと、家の中を探した方も多いと思います。我が家も家内がしまってあったものをみつけ出して送っていましたが、ふだん使っていないものがいかに多いかということに驚いていました。いざというときのために貯め込んでいるのですが、結局は使わずに捨てることになるものが多くなります。ふだんから持ち物に気を払い、本当に必要なものだけを手元に置くことはとても大切なことです。
不要なものをたくさん持っていると、本当に必要なものがすぐにみつからなくなることもあります。こういう私も書類の整理が下手で、ほしい書類がすぐに出てこなくて困ることがよくあります。ふだんから自分にとって本当に必要なものは何かを考えて生活することが大事なのだと思います。高校時代の教師だった神父さんが亡くなったときに、残されたものはスーツケース一つに入る量だったという話を聞いて、そのようになりたいと感じたものでした。
見直してみると電気の節約もたくさんできることが分かります。今回の大震災で、節約の大切さ、災害時だけでなく日常の生活でもとても大切なのだということが勉強できたのではないでしょうか。
しかし、節約しない方がよいこともあります。それは、赤ちゃんと共有する時間です。5カ月になった孫がしばらくの間長女と一緒に帰ってきていました。お世話がたいへんで、私たちは振り回されているのですが、抱っこされたりあやされたりという、周囲の人との交流の中で赤ちゃんが日々成長してゆくのが手に取るように分かります。周囲の私たちも、赤ちゃんの笑顔やかわいい声に癒されています。赤ちゃんの成長は振り返ってみると本当にあっという間です。今しかない時間を大切に、気持ちの余裕を持って赤ちゃんと接してほしいと思います。
相談室からの風景 「Q&A」編 No.1
2007〜08年に心理チームから発信していた『相談室からの風景』が復活します。前回は「発達の道すじ」編として、胎児期・乳児期から青年期までの子どもの発達をご紹介しました(まとめて読みたい人は、受付に声をかけてね)。今回は「ことばが遅い」「落ち着きがない」「園や学校に行きたがらない」など、子育て上の悩みやトピックスをとりあげます。
復活第1回目のテーマは、この度の大震災における子どもたちの心理的なケアについてです。
Q. 震災の後、子どもが一人になるのを怖がったり、眠りが浅くなったりしています。どのように接すればよいでしょうか。
A. 何か突発的なショッキングな出来事(事件や事故、災害に遭遇したり、目撃したりすること)を経験すると、心や身体がいつもと異なる様々な反応を示します。それは、非常時に対する正常な反応と考えられています。今回の大震災の場合は、直接被災していなくても、テレビで繰り返し映像が流されたり、大人が怖い体験や悲しい思いを語るのを聞いたりしています。まして実際に地震や余震、その後の停電など、いつもと違う日常を体験していますので、子どもが不安や恐怖を感じて、いつもと違う言動が見られているのだと思われます。否定したり叱責したりすることなく、「そういうときはそうなって当然だ」と受け止めていくことで、多くは1カ月程度で自然におさまるものなので大丈夫です。年齢別に主な反応に対する対応例を挙げましたので参考にしてください。
大きな事件や事故の直接の被害者になった場合や、事態が収拾してから1カ月以上経っても症状がおさまらない場合には、専門家による対応が必要なことが考えられますので、ご相談ください。
<幼児・小学校低学年の場合>
※不安で両親から離れられない。
⇒常に大切に思っていることを示し、具体的な情報で安心させる(必ず学校に迎えにくる、留守の間に世話をする人は誰かを伝えるなど)。
※何か訴えようとするが言葉にならない。
⇒子どもが感情を表現しようとするのを手助けする(お話したいのは、こういうことかな?)。
※退行症状(指しゃぶり、おねしょ、舌足らずな話し方など)
⇒一時的な事なので、ありのままに受け止めてあげる。
<小学校中学年以上の場合>
※悪夢を見る。
⇒どんな夢を見るのか話させ、「心が恐怖と闘って頑張っているのだ」と伝える。
※繰り返し事件のことを話す。
⇒その時の感情を表現させて受け止める。
(参考:「子供のPTSDに対する心理的処置」本田恵子)
この連載は、発達相談の杉崎先生(月曜日)&小倉先生(火曜日)が担当しています。今回はお二人の共著です。
ヨコピーの『こども講座』「起立性調節障害」
子どもから大人へ心と体が変わっていく、小学校高学年から高校生の時期に起こる病気です。小学校高学年・中学生の約10%に起こり、女の子に多くみられます。立ちくらみ・おなかが痛い・頭が痛い・吐き気がする・食欲がない・体がだるいなど症状は多彩で、午前中は調子が悪く夜になると元気が出てくるのも特徴的です。このような症状は、体の成長に自律神経の発達がおいつけなくバランスを崩したり、自律神経の反応が遅れてしまったりすることによって起こるとされています。
治療は、日常生活の中で自律神経を鍛える・薬物療法(血圧を上げる薬や症状を軽くする薬を内服する)があります。自宅でできることは生活習慣の改善です(早寝早起きを心がける・朝ごはんをしっかり食べる・軽い運動をするなど)。薬は、症状が良くなってもすぐにやめないで相談しましょう。経過が長引くこともあります。まずはこの病気について、本人・家族だけではなく、学校の先生も理解することが一番大切です。決して焦らずに、周りが温かく見守ってあげましょう。
編集後記
外出するのが楽しくなる季節になりました。木々の種類によって色の異なる新緑に心浮かされます。箱根の山も森林浴にはもってこいでしょう。爽やかな季節と共に、今年も看護学生の実習が始まります。毎年のことではありますが、学生にとっては何もかも初めてのことです。小児の病気や、お子さんや保護者の方との触れ合いから、たくさんの事を学び取ってほしいと願っております。学ぶ事を楽しいと思えるように、また教える事を楽しいと思えるように、私達も爽やかな気持ちで迎えたいと思っております。