院内報
こあら通信 第143号 March 2010
目次
・予防接種の料金
・「肺炎球菌ワクチン」について
・絵本の紹介
・お知らせ
・編集後記
予防接種の料金
厳しかった寒さも和らいで、春が近づいていることを感じます。2月にも新しいワクチンが発売され、ワクチンラッシュとも言うべき状況ですが、日本では長い間新しいワクチンが導入されていなかったので、期待と戸惑いが拡がっています。
一番の問題は予防接種の料金です。BCGや三種混合など公費負担の予防接種の料金は、ワクチンの値段に「診察料+接種の手技量+その他」を加えた金額が設定されています。任意の予防接種についても同様に決めていますが、料金の設定は自由とされていて、医療機関の間で統一料金を決めてはなりません。
メーカーが卸業者に提供するワクチンの値段も同様で、定価は決まっていますが実際の納入価格は自由に決められます。そして卸業者が医療機関に納入する価格も自由で、メーカーがそのことに口出しするのは違法と定められています。卸業者との関係、納入する量などによって多少値段は違ってくるのがふつうです。
最近発売された子宮頚がんワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンは、このワクチン代がかなり高額であることが、料金を押し上げる一番大きな要因となっています。海外も似たような価格なので、仕方がないと言えばその通りですが、もう少し安くならないものかと思います。
また、各医療機関での料金設定も自由で、多くの子どもに接種してあげたい、患者さんを増やしたい、などの思いで料金を低く設定する医療機関もあるでしょうし、逆に新しいワクチンのリスクも考えて高額に設定する医療機関もあります。
今回発売されたワクチンは海外では多くの先進国で定期接種となっており、子どもたちにとって必要なワクチンです。しかし、現在の日本ではお財布の中味と相談して接種せざるをえません。言い換えれば、子どもの命がお金で左右されることになります。これは日本も批准している子どもの権利条約にある「あらゆる種類の差別から守られなければならない」という内容に反します。日本でもこれらのワクチンが定期接種化され、公費負担で受けられる日が早くやってきてほしいと思いますし、保護者の皆さまも行政に働きかけていただきたいと願っています。
「肺炎球菌ワクチン」について
肺炎球菌とは
肺炎球菌は細菌の1つで、健康な人の鼻やのどの奥に住みついていまが、体調を壊したり、免疫が落ちたりすると、周囲に感染が拡がり症状が出ます。抗生物質による治療が必要になることがありますが、抗生物質が効かなくなっていることが多く、治療を難しくしています。
肺炎球菌による病気
肺炎球菌は、中耳炎、髄膜炎、肺炎、副鼻腔炎、潜在性菌血症(細菌が血液に入ってからだの中を流れている状態)などを起こします。一番多いのは中耳炎、恐いのは髄膜炎です。中耳炎の約60%は肺炎球菌が原因で、肺炎球菌による髄膜炎は年間約200人で死亡率は5%くらい、4人に1人の割合で難聴やマヒなどの後遺症を残します。
ワクチンで防ぐ
子どもの多くはふだんから肺炎球菌が住みついていて、特に集団生活に入ると2?6ヶ月の間に100%近くが肺炎球菌を持つようになります。すべての子どもが病気になるわけではありませんが、重篤な感染を防ぐためには、予防接種が最も有効です。
接種できる年齢
2ヶ月?9才
接種スケジュール
①生後2?6ヶ月のお子さんは、3種混合と同じ回数/間隔です。
1回目→2回目→3回目→1年あけて4回目
②生後7?11ヶ月のお子さんは、2回接種+追加です。
1回目→2回目→1年あけて3回目
③1才のお子さんは1回+追加です。
1回目→1年あけて2回目
④2才から9才のお子さんは1回接種のみです。
料金
9,500円
詳細はスタッフまでお問い合わせ下さい。インターネットでも予約できます。
絵本の紹介
『くんちゃんのはじめてのがっこう』
作 ドロシー・マリノ
ペンギン社
くまのくんちゃんがはじめて学校へ行く日のお話しです。表紙の裏から物語が始まります。
期待に胸をふくらませ出会うものすべてに「ぼく、がっこうへいくんだよ」とうれしそうにはなしかけます。ところがちょっとしたことで、教室から飛び出してしまいます。はじめてのことには、期待と同じくらい不安があるものです。
でも大丈夫、ちゃんとくんちゃんは教室へ戻ってきます。
新1年生のお子さんの気持ちをしっかり描き込んである一冊です。送り出すお父さんやお母さんにも不安はあると思いますが、ひとつずつ不安を乗り越えて、お子さんは新しい生活と環境に上手に馴染んでいきます。くんちゃんみたいにね…。暖かく見守っていきたいものです。
お知らせ
1. 麻しん風しん混合ワクチン予防接種は、今月末まで!
現在、1才、年長さん、中学1年生、高校3年生の年齢に該当する方は2回目の麻しん風しん混合ワクチンが今月末まで無料接種できます。お忘れの方はお早めに。
2. 日本脳炎2期(9才から13才未満の方)ワクチンについて
現在、日本脳炎2期対象者のワクチン(旧ワクチン)が期限切れのためなくなり、接種できなくなりました。今後、経過措置として対処されそうですが、現段階では不確定です。追ってご連絡いたしますので、もう少しお待ち下さい。
3.来月号より新連載「子どもの歯について」(仮題)
子どもの歯、よくわからないこと、知らないことたくさんありませんか?私達
の疑問に、ほたるだ歯科医院の山下伸司先生が答えてくれます。お楽しみに!
編集後記
子宮頸癌ワクチンが発売されはや1ヶ月。「検診してないんだよね」という女性もいらっしゃいますし、「うちはガン家系だから」と関心を示す女性もいらっしゃいます。肺炎球菌ワクチンに関しては、皆さん関心が高いようですね。「値段高いけど・・一生モンですよね?!」というお母さんがいらっしゃいました。検診、ワクチンは自分自身の為でもあり、愛する人の為でもある・・と、思う今日この頃です。