院内報
こあら通信 第141号 January 2010
目次
・子どものかぜ薬
・予防接種情報/お知らせ
・ヨコピーの子ども講座
・絵本の紹介
・編集後記
子どものかぜ薬
新しい年を迎えました。経済不況から抜け出せないまま、その影響は弱者である子どもたちに及んでいるように感じます。子どもたち本位の医療を心がけて今年1年進んでいこうと改めて考えています。
子どもたちのため…と考えたときに、最近一番悩んでいることはカゼに対して薬を処方するということです。子どもが発熱し、咳・鼻水が出てカゼを引いたと思うと、多くの方は薬を与えて早く治してあげようとします。しかし、ご存知のようにカゼの大部分はウイルス感染症です。そしてインフルエンザを除くと、ほとんど全てのカゼのウイルスには効果のある薬はありません。もちろん抗生物質もウイルスには効果がありません。
鼻水や咳を楽にしてあげようと処方している、いわゆるカゼ薬も、最近の欧米の研究では、ほとんど効果がないと言われています。薬が効いていると感じることがあるのも、もしかしたら自然に治っているだけなのかもしれません。それどころか、カゼ薬による副作用で、たくさんの子どもたちが病院を受診しているといわれています。日本とは医療事情が異なる米国では、病院を受診することなく市販薬が多く使われる事情があってのことですが、日本でも市販薬に関する再検討が始まろうとしています。
私たちのクリニックで処方するカゼ薬も、実は市販薬とほぼ同じような内容で、薬そのものの量は市販薬より多いのが一般的です。当然、カゼ薬についてもう一度見直してみることが必要なのです。カゼ薬は効かない、副作用がある。しかし、受診する患者さんの多くはカゼ薬がほしい。このギャップをどう埋めてゆけばよいのか悩むところです。
病気をきちんと診断すること、病気の経過の予想を説明できることが大切で、その上で受診する方々の心配にいかに寄り添えるかが問われているのだと思っています。カゼにはホームケアと子どもの観察が何よりも大切なのです。クリニックを受診する皆さまも、カゼのことをよく知って、子どものために何が必要かを考えてほしいと願っています。
予防接種情報/お知らせ
予防接種情報
1.新型インフルエンザ予約状況
1歳から小学生3年生、中学3年生、高校3年生のお子さんまで接種できるようになりました。まだ接種していない方、新型インフルエンザにかかっていない方、ご希望あれば連絡下さい。予防接種の時間帯(月?土の朝8時台、火/金の午後3時?4時台)で予約できます。小学生までは2回接種、中学生以上は1回接種です。※2回目接種の予約をまだしていない方はご連絡下さい。
2.ヒブワクチン予約待ち状況
現在、ワクチンが入るまで約8ヶ月お待ち頂いております(輸入量が少なく入手困難となっています)。6月頃には輸入量が増える予定ですので、もう少しお待ちください。
3.今年発売されるワクチンについて
子宮頸がんワクチンが昨年12月末に発売され、小児用肺炎球菌ワクチンは3月に発売予定です。子宮頸がんワクチンは、10歳以上の女性に接種します。肺炎球菌ワクチンは髄膜炎や肺炎の予防が第一の目的ですが、中耳炎の予防にもなります。接種スケジュールは未定ですが、外国では2か月の誕生日から開始して、3?4週間間隔で3回受け、1歳を過ぎたら追加接種を1回受けるのが一般的です。どちらも任意接種となります。
お知らせ
1.今月は絵本の紹介です。
毎週金曜日の健診・予防接種の時間帯に読み聞かせをお願いしています。スタッフも時々聞こえてくるお話に耳を傾けて、もっと聞きたくなっています。今年は寅年なのでトラの出てくる絵本を探しました。本棚には「おちゃのじかんにきたとら」「ちびくろさんぼ」も置いてありますが、紹介したのは「ラチとライオン」・・。勇気が出てくる絵本です。ぜひお手にとってみて下さいね。
2.カレンダーを作りました。
新年のご挨拶にポケットサイズのカレンダーを作りました(事務の長谷さんの力作)。横田医院用として、水曜日も休日(赤文字)になっています。GWや夏期/冬期の休診や臨時休診等の予定は未定ですので、その都度ご確認下さい。毎年変わらないインフルエンザの予約開始日ものっています。ご利用いただければうれしいです。
ヨコピーの『こども講座』
「季節性インフルエンザ」
主に冬に流行するウイルス性の病気です。昨年、新型インフルエンザが大流行しましたが、新型・季節性のインフルエンザともに症状に大きな違いはありません。
インフルエンザにかかると、頭痛やのどの痛み、悪寒などの症状とともに急激な発熱がみられます。その他に、筋肉痛や関節痛、下痢・嘔吐など幅広い症状がでることもあります。潜伏期間は1?3日と比較的短く、咳やくしゃみなどの飛沫によって感染します。集団生活の場で発症すると感染が広がり学級閉鎖になることがあります。
インフルエンザは、流行状況・症状・診察所見・検査結果などから総合的に診断され、抗ウイルス薬を服用すると効果があります。発熱してすぐに受診しても、検査をしない場合や検査しても結果が陰性になる場合があります。まずは慌てずお子さんの様子をみて、意識障害や呼吸がおかしいといったことがなければ、1日は自宅で安静にしましょう。
インフルエンザにかかってしまったら…と考えるより、予防することが大切です。小さなお子さんのいる家庭では、大人や兄弟がインフルエンザをお家に持ち込んで感染する場合が多いようです。予防策としてマスクをする、人混みにはあまり行かない、手洗い・うがいをする、自宅では換気をこまめにする、部屋が乾燥しないように加湿する(湿度50?60%)などです。毎年予防接種を受けることもお勧めします。
絵本の紹介
「ラチとライオン」
マレーク・ベロニカ ぶん・え とくながやすもと やく
福音館書店
《あらすじ》
よわむしラチくんのお気に入りはライオンのえ。「ぼくにもこんなライオンがいたらなんにもこわくないのに」あるあさ目をさますと、小さな赤いライオンがいました・・
《読み聞かせアドバイス》
よわむしのラチくんの強い見方!この本を読んでもらうと子ども達は、こんならいおんがそばにいてくれたらいいなって思うはず、ちっちゃいけどユーモアたっぷりで頼もしいですよね。またラチくんの思いに自分を重ねながら、ポンと背中を押された気持ちになることでしょう。すっきりとしてわかりやすく満足感の残る作品です。
読み手さんは、展開を楽しみながらリズミカルにポンポンと読んでいただいて、教訓的な言葉かけは必要ありません。何回も読んで楽しんでいるうちに、子ども達はすでにたっぷりメッセージを受け取っているはずですから…
編集後記
「もうMR2期を受ける年齢?!」と驚くことがよくあります。(まだの人、3月末までですよ)お子さんの成長に感動、自分も年をとっているという感動(?)。病院に来るだけで泣いていた子が、にっこり笑って帰る姿に密かに感動し、予防接種が嫌で大人3人がかりで押さえていた子が、「ぜんぜんいたくない!」と笑顔で言っている姿にも感動を覚えます。ささやかですが、皆さんの成長に私達が関われるのは大変幸せだと思います。今年もよろしくお願いいたします。