院内報
こあら通信 第137号 September 2009
目次
・感動
・「相談室からの風景から」
・ヨコピーの子ども講座
・お知らせ
・編集後記
感動
夏休みも終わりに近づいてきました。お子さん方はどのような夏休みを過ごしたでしょうか。私はこの夏心に残ることが二つありました。
一つは小田原医師会合唱団の第1回定期演奏会に少しだけですが参加させてもらったことです。藤原真理さんという有名なチェリストの応援を得たこともあり、予想以上に大勢のお客さんの前で合唱するという初めての経験をしました。団員の熱心な練習光景にまず感激していましたが、合唱にあまり縁がなかった私は、団員の声が一つになって観客に届くということに心を動かされました。日ごろから医師会の仕事は医学に関することがほとんどですが、このように医学から離れた活動が、かえって医療の提供側と患者さんのコミュニケーションを深めるのではないかと感じたくらいです。
もう一つは夏休みを利用して南アメリカのサファリを訪れ、野生の動物たちに出会ったことです。キリンやゾウ、サイ、ライオンなどの野生動物を目の当たりにして、本物を見たという驚きや喜びだけではなく、いろいろと考えさせられることもありました。この時期の南アフリカは冬で、サバンナの木も枯れて動物を発見しやすい時なのですが、それでも簡単にはみつけることはできません。ゾウやキリンが木を食べるスピードはものすごいもので、これだけの動物が生活していくには、ほんとうに広大な土地と豊かな自然が必要なのだということを実感しました。
小さい頃から夏休みにはいろいろ心に残る出来事がありました。それらの思い出が今の自分を作り上げていることを今さらながら感じます。アフリカからの長い帰路の中で、私の両親は私にどのように育ってほしかったのだろう、と考えていたら閃きました。命には限りがありますし、富や名誉だけでは幸せにはなれません。たくさんの感動を持って生きることこそ、一番に願っていたことではないかと気付いたのです。
東京女子医大の教授だった先生の「人間はなぜ感動するのか」という講演を読んでいたら、ある有名な教授が、最終の講義で「感動なき民族は滅びる」と黒板に書いて去っていったという話が出てきました。その意味を少し感じた夏休みでした。
「相談室からの風景から」
「寺小屋お師匠の 不登校のショータイ」
さて、今月は子どもが不登校になった訳についてお話しましょう。前回、不登校の原因は、学校や友達、いじめではではなく、母と子の関係にあると言いました。「原因」は、子ども自身の「不安感」「恐怖感」「自信の無さ」です。
不登校児はお母さんが作る・・こう言うとショッキングだと思いますが、A君が不登校になったのは、自分に自信がないからなのです。不安がいっぱいなのです。怖いのです。自分で物が決められないのです。要するに、「自立」していないのです。それは自分で得るものではありません。愛情と共に育てられるものです。
愛情たっぷりかけて育てたのに、どうして不登校になるのでしょう?お母さんの愛情に子どもも応えていたのに?
何故なら、子どもは一生懸命お母さんの望んでいる子を頑張って演じているからです。お母さんの期待に添えないと愛してもらえないから、お母さんの望んでいることをよく分かって、愛されるために一生懸命言うことを守り何でもしているのです。怖くても我慢してやります。お母さんに嫌われたくないから、友達と遊びたいのも我慢します。ゲームの時間を守ります。スポーツも頑張ります。お母さんが毎週応援に来てくれるから、頑張らなくちゃならないんです。やりたいことをやって怒られ嫌われるより、やりたくなくても頑張ります。お母さんが喜んでくれるから。可愛がってもらえるから。良い子でありたいから。自慢の子でありたいから。お母さんを愛しているから。僕はお母さんに嫌われたくない。だから、お母さんの言う通りにしている。僕が「Aのことをしたい」と言ったって、「それは将来役に立たないから、Bにしなさい。」と言われちゃう。だから僕はAを諦め、Bをする事にしてみる。でも、やっぱり辛くなってやめたいと言う。そうすると、お母さんは「せっかく始めたんだから、もうしばらく頑張りなさい。」つまり、お母さんは分かってくれないんだよ。もう言うのも諦めた。お母さんの言う通りしていれば、僕は愛されるから。だから自分で何かを決めることはやめた。「自分で決めなさい」と言われたって、お母さんが何という答えを望んでいるか、分からないよ。違ったらまた何か言われるし。間違えるの恐いし。だから、しゃべるのめんどくさい。」
頑張っているのに、何で褒めてくれないんだろう?確かに成績も、もう上げるのは難しい。友達と仲良くしているのも疲れる。会いたくない。学校へ行きたくない。そういって子供の心が悲鳴を上げる、それが不登校です。
母親が、子供を愛しているのは誰でも同じです。でも愛し方によって、子供は自立出来たり、不登校になったりするのです。その違いは、何処にあるかと言えば、「親の愛が子供に伝わっていたか」と言うことです。小さい時に、親に愛されたと感じている子供は、自立出来るのです。それは、「どんな自分でも、親が自分のことを認めてくれた」と感じることなのです。子供がそう感じる子育てをしていけば、間違いありません。
ヨコピーの『こども講座』
「転落」
0?2歳ぐらいの子供に多い事故は、窒息・誤飲・やけど・転倒転落による外傷等があげられます。その中でも特に多い転落についてお話します。転落が起こる状況は色々なものがあります。赤ちゃんでは、寝返りをうった時にソファーやベッドからの転落、1歳頃からは階段・ベビーカー・ショッピングカートからの転落などがあります。最も危険なのは、ベランダや窓からの転落です。こうした事故は、日ごろから大人が注意していれば防ぐ事はできます。例えば、赤ちゃんを1人にしない、ベランダや窓の下には踏み台のような物は置かない、ベビーベッドの柵はしっかり上げる習慣をつける、階段などの段差にはフェンスを取り付ける、チャイルドシートやベビーカーに乗るときは安全ベルトをすることなどです。もし転落してしまった場合、意識があるか・出血してないか確かめましょう。意識がない、大量に出血している時等はすぐ受診します。泣いているが顔色も良く、普段と特に変わった様子がない場合は自宅で様子を見ましょう。ただ、しばらくしてから症状が現れる事があるので24時間くらいは注意してください。まずは、事故が起こらないよう自宅の安全チェックをしてみましょう。
お知らせ
インフルエンザワクチン(季節性)予約開始
9月1日よりインフルエンザの予防接種予約が始まります。ワクチンは、従来どおり季節性インフルエンザに対応したものです。新型インフルエンザのワクチンについては、供給のめどが立っていないので接種できません。完全予約制で、当日接種はお受けできませんのでご了承下さい。予約は、定員に達した時点で終了となります。(※新型インフルエンザワクチンについては、新しい情報が入り次第お知らせいたします。)
接種対象者:喘息がある方、受験を控えている方、集団生活をしている方、6ヶ月未満のお子さんがいる家族
※6ヶ月以上?1歳未満のお子さんには積極的にはお勧めしていません。ワクチンを打っても抗体がつきにくく、インフルエンザにかかっても重症化しにくいからです。(6ヶ月未満のお子さんは接種できません)
接種回数:1歳?12歳(小学校6年生まで)は2回接種
1回目と2回目の間隔2、3週間あけると効果的です。(最低1週間、最大4週間)
13歳以上(中学生以上)は1回接種
接種料金:3000円/1回
編集後記
新学期が始まりましたが・・早々に本格的な新型インフルエンザの流行となってきているようです。季節性インフルエンザの予防接種も始まりますし、頭が痛くなります。 さて、浅井先生の「相談室からの風景」は一旦終了となります。色んな視点から子育てに関する情報をお伝えしようかと、只今編集会議中です。来月は学会報告となります。今後のこあら通信をお楽しみに。