院内報
こあら通信 第136号 August 2009
目次
・みずいぼの治療
・「相談室からの風景から」
・ヨコピーの子ども講座
・お知らせ
・編集後記
みずいぼの治療
夏休みになりました。新しいインフルエンザは少しずつ身近に迫ってきているように感じます。暑い季節ではまだ大流行にはならないでしょうが、冬に向けて対策を考えておかなくてはなりません。
夏が近づくといつもみずいぼの治療が問題となります。最近、多くの小児科医が参加しているメーリングリストでみずいぼの治療について議論が盛り上がりました。まず感心したのは、多くの地区でみずいぼがあってもプールに入ってよいと決めていることです。
みずいぼはウイルスによる皮膚の感染症で、皮膚がこすれ合う部分にできやすく、それ自体はかゆみも痛みもありません。そして1年以上かかることもありますが、無治療で必ず治ることがわかっています。プールで遊んでいるときにタオルや浮輪を共有することでうつることはあるでしょうが、プールの水には塩素が入っていますし、水の中でウイルスは薄められますので、水だけを介してうつる可能性はあまり大きくないと考えられています。逆に、日常の普通の遊びの中でもうつっている可能性も少なくありません。
プールに入れないのでみずいぼを取るように園から言われたという患者さんが、夏になると増えてきます。みずいぼを取る治療はとても痛いのと同時に、すぐに別の場所にできることが多いので、子どものために良い治療だとは思えません。保護者からの要求で取ることもありますが、この治療はほんとうに子どものためになっているだろうかと考えることが多いのです。
保護者や園のために、子どもがあまり意味のない、苦痛を伴う医療を受けなくてはならないというのは理不尽です。子どものためではなく、うつしたと言われないようにという保護者や園のために治療を行っていると言われても反論できません。
これから新型インフルエンザが流行したときに、熱が出た子はすべてインフルエンザの検査をしてからでないと登園できないので、病院で必ず検査を受けるように・・というような馬鹿げたことが起こらないように、誰のための医療かをきちんと考え直してみることも必要ではないでしょうか。
「相談室からの風景から」
「寺小屋お師匠の 学校に行かれない理由」
今回は、不登校についてどうしてそうなるのか、考えてみたいと思います。
不登校になる子の多くは、普通の良い子です。それが突然、何かのきっかけで学校へ行かれなくなります。・いじめ・先生が怖い・勉強が分からない・友達に無視された。しかしこれらは不登校の「きっかけ」にすぎません。これらの理由で学校へ行かれなくなるのなら、もっとたくさんの子供が行かれなくなるはずです。では、原因は何なのでしょう。
子ども達は、「いじめられるのではないか」「何か言われるのではないか」と様々の理由をあげます。そして、それらにおびえます。学校へ行くとそうなるのではないかと不安になるのです。この不安になった子や怖くなった子は、自分を守るために、どうするのでしょうか。
一番良い方法は「学校へ行かないこと」です。子ども達は、無意識のうちに体が防衛本能を働かせ、体の具合を悪くします。朝になると、・布団から出られない・熱が出る・お腹が痛くなる・気持ち悪くなる・制服が着られない・靴が履けない・玄関から出られない等々。このような状態になれば、学校へ行かなくてすみます。無意識に起こるものなので、当人もなぜそうなるのか分かりません。病院でいくら検査をしても原因はわかりません。学校へ行かせられないと分かると、具合はけろっと治ります。学校から帰ってくる友達を待ちわびて元気に遊び、明日の学校の仕度をし、眠りにつきます。しかし、翌朝また腹痛等が起き、学校へ行かれなくなるのです。こうなると、本物の不登校です。
親は、「学校は行く所である」「行かねばならない所である」「何とか行って欲しい」と思い、「遅刻しても良いから、遅れてでも行きなさい」「とにかく、頑張って行きなさい」と子供のためを思って、こう考えるものです。また、「ここで休ませたら、勉強が遅れてしまうのではないか。」「分からなくなったら、またいじめられちゃうのではないか。」と不安を感じるものです。
しかし、子供の立場で考えると学校へ行くことが怖くて不安で苦痛なのです。自分でも分かりません。学校へ行きたい気持ちはあります。行かねばならぬ事も分かっています。しかし、行く気になれません。体が思うようにならないからです。
その時、一番信頼している母親に「学校へなんとしても行きなさい」と言われるのです。地獄だと思っている学校へなんとしても行きなさい。子供は、母親は自分の事が分かっているのか?本当に私のことを愛しているのだろうか?と親を信頼出来なくなってしまうのです。そんなことで本当に母親の愛情を信じられなくなるものでしょうか?
しかし、朝具合が悪くなり「学校へ行きたくない」と言った時、何にも言わないで「お休みしていいわよ」と言ってくれたら、子供は、本当に安心するのです。「自分を分かってくれている。愛してくれている」と感じるのです。
不登校の原因。それはここまでくる長い年月、小さい時の子育てまでさかのぼります。次回、母と子の関係について お話しようと思います。
ヨコピーの『こども講座』
「鼠径(そけい)ヘルニア」
鼠径(そけい)ヘルニアとは、太ももの付け根(鼠径部)のお腹の壁の弱い所から腸が押し出される病気です。
普段は膨らんでいませんが、うんちの時や泣いた時など、お腹に力が加わった時や、体を使って遊んだ夕方などに膨らみが目立ってきます。痛みのない膨らみで男児に多く、陰のう内に突出する事もあります。手で押すとグルグルと音がして膨らみが元に戻ります。いつもと違う膨らみに気づいたらご相談ください。また、まれに手で押しても戻らない場合があります。そのまま放置すると腸が血行障害を起こす危険性があります。膨らみが元に戻らず痛がって不機嫌になったり、嘔吐しグッタリしている場合は、早めに受診してください。
お知らせ
1. 夏期休暇等、診療時間の変更
8月13日(木)から19日(水)・・・夏期休暇のため休診
8月12日(水)・・・齊藤先生で午前午後診療(横田先生不在)
8月20日(木)・・・渡辺先生で午前のみ診療(横田先生不在)
8月28日(金)・・・横田先生で午前のみ診療(外来小児科学会出席のため)
8月29日(土)・・・休診(外来小児科学会出席のため)
休診の間は、他医療機関・休日夜間診療所のご利用をお願いいたします。
2. インフルエンザワクチンについて
現時点(7月下旬)では、新旧ワクチンの情報は入手できておりませんが、予約は例年通り9月から始まる予定です。(予約電話、インターネットにて予約できます。)
詳細は来月こあら通信、ホームページをご確認下さい。
3. 禁煙外来成功率100%!
今春より始まった禁煙外来ですが、現在のところ成功者4名と成果が出ております。
「体が軽くなった」「疲れなくなった」「子どもの喘息が出なくなった」何よりも「子どもが喜んでくれる」!
喫煙と健康、子どもへの影響について今一度考えてみませんか?
待合室には禁煙に関係する資料もおいてあります。興味ある方はスタッフに声をかけて下さい。
編集後記
夏休み。(個人的には8月27日の気分?)思い出せば中学の夏の課題はすさまじい量でした。美術音楽に至まで全教科課題。数学は問題集1冊分、国語は漢字書き取り、詩作、それと読書感想文。暑い中『人間失格』読む辛さ(あ、一句)。『初恋』は姉妹で爆笑(いや、名作です)。『月の狩人』で母と語り。出版社の広告ではありませんが、夏の読書は楽しめます。『初恋』で盛り上がれるのですから。(だから名作だってば・・)いい機会です。