院内報
こあら通信 第134号 June 2009
目次
・新型インフルエンザ
・「相談室からの風景から」
・ヨコピーの子ども講座
・ホームケア・アドバイス
・編集後記
新型インフルエンザ
新緑が美しい季節になりました。世間は新型インフルエンザの話題で持ち切りです。最初のセンセーショナルな報道の連続から、次第に冷静さを取り戻しつつありますが、私たちも事実を正確に知り、賢く対応することが求められる時期に入ってきました。報道では新型インフルエンザの発生数はやや減少しており、湿度が上がり暑くなるこれからの季節には、いったん流行は収まることが予想されます。しかし、冬にかけて第二の流行がきっと来るはずです。このときに備えて、今から対策を考えておかなくてはなりません。
今回のインフルエンザは弱毒で、今までの季節性インフルエンザと同じ程度の症状です。怖れることはありませんが、毎年のインフルエンザと同様に警戒は必要です。特に高齢者や乳幼児、妊婦、基礎疾患をもった人たちへの影響はまだわかりませんので、甘く見ないことも大切なことです。多くの人、特に低年齢の人たちはこのインフルエンザに対する免疫を持っていませんので、流行が拡がるスピードは今まで以上になることが予想されます。
抗インフルエンザ薬が効くこともわかっていますが、患者が多くなれば薬の不足が起こるかもしれません。また、迅速診断キットも不足する事態が予想されます。医療側の広い視点に立った判断で診療を進めることが必要となり、受診者がパニックに陥らないことが肝要です。そのためにも正確な情報を持っていなければならないのです。
日常の生活で気をつけることは、季節性のインフルエンザのときと同じです。規則正しい生活をして体力を落とさない、不要不急のことで人が集まる所(デパートや映画館など)へ出かけない、手洗いやうがいの励行、マスクの着用などが中心です。集団生活の場から逃れることはできませんので、それでも感染することはきっとあるでしょう。
しかし、それも仕方のないことです。今回の新型インフルエンザは重症化しにくいし、治療法もあるのですから。でも強毒のトリインフルエンザがやってきたら、そうは言っていられません。今回は、その時のための予行演習としても、身の振り方を見直すよい機会だと思います。
「相談室からの風景から」
「寺小屋お師匠の不登校は、突然やってくる」
今月はA君の話の続きです。先月号をお読みでない方はそちらもお読みください。
父親は「お前は、何でも中途半端なんだ」と言いました。A君は全く学校へ行かなくなりました。呼び鈴が鳴ると「学校が僕を連れに来た!」「先生が迎えに来た!」と言って恐怖で震えました。お祭りに出かけると、同級生にお金を取り上げられ、それからは日中も外出しなくなりました。
10月中旬になって、私はA君と会いました。A君は犬小屋や机の下、押し入れや浴槽などに入って出てこないことがありました。冬休みになる前、一日だけ登校し「二度と中学には来ません」と言って、私物を持ち帰ってきました。
この時期、A君が母親によく言っていた言葉があります。「お母さんなら、母親だから僕の思っていることわかるでしょ?」「僕が助けてって言ってるのに、何でお母さんは浮き輪を投げてくれないの?」「僕のお小遣いあげるから、働きにいかないで!」「何で、何でも弟からなの?僕が後なの?」「お母さん一緒にいて」「お前(愛犬)だけが僕のことわかってくれるんだね」これは、とても重要なことなのです。
1月。A君は、精神科の薬を飲むと具合が悪くなると言って、医師と相談して薬をやめました。また、市の適応教室へ通い、楽しく過ごしていましたが、イベントの参加を突然キャンセルした後は通わなくなりました。
中学2年。A君は、私達と「子ども科学館」へ行こうと約束しましたが、当日の朝、彼は来ませんでした。父親が外出に誘っても外に出られません。(それ以来父親を怖がるようになります)それから具合が悪くなり、水分も飲めないくらい極度に悪くなりました。A君は「このままでは死んでしまうかもしれない」と思って、病院に連れて行ってくれと、自ら頼んできました。
A君が夢中になっていたのはゲームです。親にせがんで何箱も買ってもらいました。カードを買ったり売ったりしているうちに、自分のDSやソフトなども売ってしまいました。親は終わりかと思いましたが、また同じ物を買い戻したり売ったりという行為を繰り返しました。家族が呆れる中、ゲーム屋の店主に「好きなだけできていいな」と言われ、「不登校の自分が認められた」とA君は感じたそうです。
中学3年。適応教室のカウンセラーからサポート校の話を聞きました。彼は何校か見て回った後、「ここなら行かれそう」と感じ、入学を決めたのです。
しかし、これでめでたしではないのです。
ヨコピーの『こども講座』
「停留睾丸」
停留睾丸とは、睾丸が陰のうのなかに完全に収まらない状態です。胎児の睾丸はお腹の中にありますが、生まれる前に陰のうまで下りてきます。ところが、下りてくる途中で止まってしまうことがあります。それでも、ほとんどが生後6ヶ月頃までには自然に下りてくるのですが、1歳になっても下りてこない場合は、大人になってから影響(不妊症・悪性腫瘍)が出ることがありますので、正常な位置に固定する手術を行います。
普段、お子さんの陰のうに触れても分かりにくい事がありますが、お風呂の時など、体が温まった時に睾丸が下りていれば大丈夫です。もし、気になる事がありましたらご相談下さい。
ホームケア・アドバイス
「夏かぜ」
夏かぜの症状は、冬かぜによくみられる鼻水や咳など、呼吸器の症状はあまり目立ちません。発熱はあったりなかったりですが、ヘルパンギーナや咽頭結膜熱(プール熱)などは、急に39?40度の高熱が出ます。発熱は3日以内のことが多いのですが、一度下がった熱が再び上がって2?4日続くこともあります。そして、嘔吐したり、下痢や腹痛・頭痛など起こることもあります。手足口病やヘルパンギーナでは、口の中や舌に口内炎が広がり、よだれが増えたり、喉を痛がる症状をともなうため、食欲がなくなるのも特徴です。家庭では、水分補給に気をつけて、やわらかい物や冷たい物など口当たりのよい食べ物を与えてあげましょう。
他にも、手足口病のように発疹が出ることが多いのも夏風邪の特徴の1つです。暑さで体力が落ち、抵抗力が弱くなるとかかりやすくなるので、規則正しい生活をして、外出後のうがい手洗いはいつも通り忘れないようにしましょうね。
編集後記
先月、母の日にちなんで「お母さんありがとう」メッセージを募集しました。「いつも料理を作ってくれてありがとう」が一番多かったようです。確かに、ご飯を作ってくれる人は重要です・・。今月は父の日メッセージを募集します。どんなメッセージが集まるのか、楽しみです。大人になると、「ありがとう」の前に入れる言葉が照れくさくて、なかなか言えません。