横田小児科医院

院内報

こあら通信 第126号 October 2008

目次

・微量採血のための穿刺器具
・相談室からの風景-ファイル・10
・外来小児科学会報告 前編
・ヨコピーの知恵袋-肘内障
・編集後記

微量採血のための穿刺器具

 秋の風が吹いて、稲刈りの前の田んぼには彼岸花がきれいに咲いています。運動会シーズンでもあり、体調を崩しやすい季節ですので、じょうずに体調のコントロールをしてください。

 さて、今年の春ごろから「微量採血のための穿刺器具」の取扱い方法が世間を騒がせているのをご存知でしょうか。この器具は、糖尿病などで繰り返し指先からの微量の血液の検査が必要な患者さんが、痛みをほとんど感じないで指先を針で刺す器具です。当院でも胃腸炎などで嘔吐が続いていて低血糖が疑われるお子さんに、「パッチンするからね」などと説明しながら使っていました。

 この器具は針を毎回取り換えて使うのですが、フォルダーの部分は同じなので、フォルダーに血液がつくと肝炎ウイルスが感染する危険があるということが、急に言われるようになりました。これは英国で2例の事例が報告されたからですが、これも針周囲の血液が感染の原因と断定されたわけではありません。また、国内での報告は未だありません。

 もともと個人使用になっていると厚生労働省は言うのですが、実際には糖尿病教室や大学での授業などで、たくさ
んの人に使われていたのが実情ですし、販売する側もそのような使い方に警鐘を鳴らすようなこともまったくありませんでした。

 器具はアルコール綿などで拭いていますし、大量の血液が出るわけではありませんので、肝炎ウイルスなどが感染する危険はきわめて少ない(ゼロに限りなく近い)のですが、厚生労働省はこのことを大きく取り上げています。血液製剤での肝炎ウイルスの感染が大きく社会問題となったことも、対応を神経質にさせた理由かもしれません。

 同じような感染の危険は社会の中にたくさんあるはずですので、このような取り上げ方には疑問も感じますが、当院でも少数の方に使っていたというのは事実ですので、お詫びしてお知らせさせていただきます。幸い無料で肝炎ウイルスの検査ができる制度が来年3月まであります。この器具を使った経験がありご心配な方は遠慮なくご相談ください。

相談室からの風景 -ファイル・10
誇り高き4歳児

 4歳台は、「○○シナガラ、○○スル」など2つのことを組み合わせて同時に行ったり、「○○シテカラ、○○スル」など、時系列や簡単な因果関係を理解したり、見通しを持って行動を統制したりできるようになる時期です。片足を上げながら前に進むけんけんができたり、左手で紙を持って動かしながら右手ではさみを操作して切り進み、曲線を切り抜くことができたり、横に折ってから縦に折る、というように、折り紙の手順を覚えて簡単な作品を完成させたり、洗濯物を畳んだりできるようになります。車のドアだって、取っ手の部分を持ち上げながら重いドアを押す、ということができるようになるので、生活の中では新たな目で事故を防ぐ注意をしていくことが必要です。

 このころになると、3歳台で蓄積された、2次元の対比的な認識を2つずつグループに組み合わせ、「早い=○、遅い=×」「できる=カッコイイ、できない=カッコワルイ」といった、多分に大人や周囲の価値観を含んだ「評価」の目が獲得されてきます。

 自分に自信のあるときにはものすごい力を発揮できますが、そうではない時は、「デキナイ=×」のダメな自分から逃れることができず、シュンとして挑戦することをあきらめてしまったり、わざと乱暴に枠組みをぶち壊してみたり、突然ふざけてお笑い芸人のまねをしてみたり・・・。そしてますます、叱られたり。

 この、荒れは、「デキナイ」自分と、こうありたい自分との間のギャップに苦しみ、自分なりになんとか乗り越えようとしている姿です。「ちゃんとしないと」いけないことは分かってはいるけど、「でも・・・」と、自分の内なる世界と折り合いをつけるには、一定の時間と、心の支えが必要です。「でも、やってみようかな?」と思えるきっかけは、ちょっとした小道具だったり(例えば、普通の鉛筆でうまく書けない時、じゃあ金色鉛筆だったら書けるんじゃないかと頑張ってみたりする)仲良しの友達が頑張っている姿だったり、「こうするとうまくできるよ」という具体的なアドバイスだったり、「○○ちゃんならできるって、信じているよ」という、信頼している大人による心の支えだったりします。それが、「○○ダケレドモ、○○スル」、自己コントロールのめばえ、自制心の誕生です。

 誰だって「よい子」になりたい、「できる」子になりたい、ほめられたい。「ケレド・・・」「ダケドモ・・・」という、矛盾をいっぱい胸に秘めているのが、4歳児さんたち。誇り高き4歳児の持っているパワーを信じ、力づけ、次の一歩を新しい世界に向けて、踏み出させてあげたいですね。

(小倉)

外来小児科学会報告 - 前編

 恒例の外来小児科学会に出席してきました。全国の小児科診療に携わる、医師・看護師・事務・薬剤師・保育士が集まり、日々の取り組みを発表します。
 今回、ワークショップ(WS)・セミナー参加の他、看護学生に関する発表と当院で工夫している物を展示しました。学んだことを、皆さんに還元できるよう日々努めたいと思います。

「医療者のためのNLP」
「WSを体験してみませんか」他
人間関係の修復の方法、自ら発信することの楽しさや工夫について考える、刺激的な機会になりました。
(長谷)

「子ども達をタバコから守る」他
子ども達が小学生から喫煙している事に驚かされました。子ども達に喫煙させない環境を作るためにも私達大人が喫煙する事が大事だと改めて思いました。
(小長谷)

「よりよい医療をおこなうために」他
コミュニケーションは、お互いにきもちよくすごすために努力する、見る、聞く、伝えることでお互いに考えや気持ちを理解し合うことができるのだと、改めて実感しました。
また、看護実習に関わる発表では大変緊張しましたが、改めてチームワークの大切さを実感しました。
(栗原)

ヨコピーの『こども講座』
「肘内障(ちゅうないしょう)」

肘内障とは、日常の生活の中で子どもの手を引っ張ったりした時に、肘の関節がずれた状態になることです。子どもが突然痛がって激しく泣いたり、腕を曲げずダランとさせ動かそうとしません。肩が外れてしまったのかと思うこともありますが、たいていは肘の問題です。5歳くらいまでの小児にみられ、特に2歳以下の子どもに多く起こります。治療は、外来でできます。肘が元に戻ると、すぐに手を動かすようになります。家庭でも修復はできますが、最初は肘が抜けたのかどうか判断できないこともあり、慣れない大人がやるとかえって子どもに痛い想いをさせてしまうので受診しましょう。再発することもありますが、成長と共に自然に起こらなくなります。4?5歳までは手を急に引っ張ったりしないようにしましょう。

編集後記

「言葉の魔法」「言葉の暴力」よく聞くフレーズですね。この魔法も暴力も、受け取った人が「嬉しい!」と受け取れば魔法になるし、「傷ついた!」と受け取れば暴力になります。もちろん言葉の発信は大切ですが、どんな言葉でも魔法と感じられるようになりたいものです。さて、今月は子どもが1日だけ魔法を使える日があります。当医院での合い言葉は「トリックオアトリート!」いい事あるかも。

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