院内報
こあら通信 第123号 July 2008
目次
・夏の子育て
・相談室からの風景-ファイル・7
・ヨコピーの子育て知恵袋
・スタッフ紹介
・ご案内
・編集後記
出会いの直感
夏といえば夏休み。大人になってもワクワクする気持ちは同じです。日本の夏は高温多湿で過ごしにくいとされ、子育てでもいろいろな工夫がありました。たとえば衛生状態が悪かった時代は、離乳食は夏には始めないで、涼しくなる秋を待って始めるとされていました。また、良い冷蔵庫がなく、脳炎などが多かった時代には、予防接種は7-8月には行わないというのが一般的でした。
今ではこのようなことはなくなりましたが、夏特有の病気やトラブルがなくなったわけではありません。5-6年前の話になりますが、暑さの厳しかった7月の中ごろ、7ヶ月くらいのお子さんで、毎日38度くらいの熱が出るという相談を受けました。とても元気ですが毎朝38度台の熱があり、午後になると下がるというのです。原因がわからず血液の検査をしましたが、少し血液が濃くなっているような印象があった以外に異常はありません。離乳食もあまり進まず、様子を見ているうちに少し体重が減ってきました。夜はかなり蒸し暑いのですが、エアコンは使っていないということでした。
あまりに暑い環境で赤ちゃんを育てていると、発汗が調節できず脱水状態になり、熱を出すことがあります。特に夜間がそうだと午前中熱があり、午後から下がってくるという現象がみられ「夏季熱」と呼んでいます。エアコンのなかった時代には多かったのですが、もしや‥と考えエアコンを使うようにしたら、その日から熱が出なくなりました。
エアコンは身体によくないから使わない、という主義の方も少なくありません。人間の汗腺は生後も成長していて小さい頃にどのくらい汗をかいたかで汗腺の数が決まるといわれています。だから赤ちゃんに適切に暑さ寒さを経験させることも確かに必要ですが、よく様子を見て環境を整えてあげることも大切です。
夏になると他にも皮膚のトラブルなど心配なことはたくさんあります。でもあまり心配しすぎることはありません。夏のワクワクする感じを子どもたちに感じさせてあげることこそ、ほんとうは一番大切なことだと思うのです。快適な環境ばかりにいるのではなく、思い出に残る体験もさせてあげてください。
相談室からの風景-ファイル・6
1歳なかばごろの奇跡
生後10か月頃、子どもたちは、自分と物(対象)と相手(お母さん)との、3つの関係に気がつくようになります。「乗せた」「入った」「渡した」という定位行動(No.6参照)に対して、「できたね」「入ったね」「ありがとう」などの言葉をかけられると、相手ときちんと目を合わせて、うれしそうに応えます。また、自分から見つけた「電車」「アンパンマン」などを指さして、「ア、ア」と相手に訴えるようにこちらを見ます。自分(子ども)を第1者としたとき、相手(第2者)との間で、対象(第3者)を共有することができる、三項関係の成立です。そうなってくると、「チョチチョチ」「バイバイ」など、ことばで模倣動作が出てくるようになり、伝わった!という喜びに満ちた「芸達者」になっていきます。
このような力を基礎に、1歳頃から日本語らしいことばが出始め、「ママ」「パパ」「マンマ」「ブーブー」「ワンワン」など、数語が、きちんとそれぞれの対象と結びついて発せられるようになっていくでしょう。幼い自我も誕生して、発達的には、乳児期から幼児期へ、飛躍的な移行をとげていきます。
この移行期はたいへん個人差が大きい時期ですが、おおむね、1歳なかばごろには、運動面では直立2足歩行が獲得されます。ハイハイの方がまだ絶対早いのに、よろめいても、転んでも、何度でも自分で立ち上がり歩こうとします。
また、歩行が獲得されたことで自由になった手は、「道具」が使えるようになります。歩行時、がにまたで手がやや上がり、ゴジラのように歩いていた初期の段階から、足首がきっちりと制御できるようになってふらつかずにまっすぐ歩けるようになってくると同時に、手首の制御も上手になって、スプーンやスコップなど、うまく手首、ひじ、肩を連携させて、こぼさないようにすくったり、入れたりができます。描画では、ペンなどを使って、ぐるぐる書きができます。
発達検査では「はめ板」という課題を使うのですが、左右の●と■を見わけて、(コッチジャナイ、コッチダ!)と、2つの選択肢から、選び取ることができるようになると、これまで動くもの全て「ブーブー」だったのが、(「ブーブー」ジャナイ、「ワンワン」ダ)(「ワンワン」ジャナイ、「ニャーニャ」ダ)と、語彙が爆発的に増加します。1歳も後半になると、自我が順調に拡大してきていよいよ扱いづらくなってきますが、「オシッコナイ!」とふんばる子どもに、「トイレでするの?おまるでするの?」と、自我を関与させて2つの選択肢を選ばせると、「トイレー!」と走っていくこともあります。
(^^;)いつもうまく行くわけではありませんが、この時期の子どもに2つの選択肢から選ばせるワザ、いろんなバリエーションを工夫して、どうぞお試しください
小倉
ヨコピーの子育て知恵袋
「血尿」
学校の健診や3歳児健診、幼稚園や保育園での尿検査で軽い血尿やタンパク尿が見つかることがあります。このような尿検査は腎臓病を早期に発見し、早期治療することを目的として行われています。クリニックでは、まず尿検査して、尿検査の結果により、血液を採って調べたり、エコー検査が必要なこともありますが、それで異常がなければ以後は定期的に尿を調べて、血液やタンパク尿の程度が強くならないかをみていくことになります。もし待ち時間にトイレに行きたくなったら、スタッフに声をかけてみて下さい。
夏場は特に、蒸し暑い時期には汗をたくさんかくので、尿の量が少なく、濃い色になりがちです。おむつに付いたオレンジ色や薄いレンガ色のシミは、尿中に排泄される老廃物の結晶で、心配ないことがほとんどです。ただ、何度も続けて出る時には血尿かどうか確認するので、おむつを持参するか写真に撮って受診して下さい。
スタッフ紹介-高田理香
はじめまして。
6月からスタッフに仲間入りさせて頂きました、高田理香です。出身は横浜ですが、子ども(現在、中1の娘、小5の息子)を自然の多い中で育てたいと思い、夫の実家のある南足柄に越してきました。
時間をみつけては金時山へ登ったり、海(岩、吉浜)で遊んだりスキーをしたりと、家族揃って楽しんできました。 元気が取り柄です!!
何かしら皆さんのお力になれるように努めていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
ご案内
1.看護学生の実習
今月も小田原看護学校の学生が看護実習に来ます。皆さんにも、色々お尋ねしますが、ご協力よろしくお願いいたします。
実習日 7/14(月)7/15(火)
2.MR予防接種済みましたか?
麻しん風しんの接種率が出ました。
神奈川県は全国32位。
小田原市は県内2位!
中1、高3の方も対象です。部活動で忙しい方は、夏休みのうちに接種しましょう。公費でできます。
編集後記
先日初めて西表島へ行ってきました。自然に圧倒されたのは勿論ですが、厳しい環境に適応しなければならなかった方達の道筋を知る機会もありました。便利さというのは、工夫・考える・待つ、といった手間をかける作業を放棄することである、と誰かの声が聞こえるような気がしました。次の世代に残したいものがたくさんありますが、南国を照らす星の数ほど、残せないかもしれません。院内にある七夕の短冊に、皆さんの残したいもの、教えて下さい。