院内報
こあら通信 第122号 June 2008
目次
・出会いの直感
・相談室からの風景 ?ファイル・6?
・ヨコピーの子育て知恵袋
・ご案内
・編集後記
出会いの直感
小児科学会関係の集まりで、「初期印象診断」について講演する機会がありました。初期印象診断とは、最初に患者さんと出会った時点で、詳しい診察や検査を行う前に、簡単に病状を尋ね特徴的な症状を感じて、第一印象で診断することを言います。いわば「出会いの直感による診断」と日本外来小児科学会の先輩の先生に教わりました。
以前に、急患診療所でとても具合の悪い赤ちゃんに出会ったことがあります。両親はまだ若く、一人目の赤ちゃんだということもあって、その重大さには気付いていないようでしたが、顔色は真っ白で苦しそうな呼吸をしており、泣き声も小さく蚊が鳴くような感じでした。その赤ちゃんは細菌性髄膜炎で、すぐに病院へ送り無事救命されたのですが、出会いの直感で事の重大さに気付くにはそれなりの経験が必要です。
私も小児科医になりたての頃は「全身状態」が良いのか悪いのか、すぐには判断できないことがしばしばあり苦労しました。呼吸の音は正常か、心雑音はないか、ということは新米の小児科医でも分かるのですが、その患者がどの程度重症かを見極めるのは意外に難しい
のです。
私の父は患者さんがドアから入ってくる姿を見て、処方する薬を考えていた、とあり得ないようなことをよく言っていましたが、今ではあながち嘘ではないのかもしれないと思うようになりました。見る、聞く、触るなどの五感を使って瞬時に診断する能力は、経験とともに研ぎ澄まされてゆくものです。
4月に10歳になったアイリッシュセッターの愛犬が亡くなりました。大好きな猫をみつけても追っかけない、いつも吠える場面で吠えない、階段でつまずくなどの症状で「おかしい」と思ったのですが、あっという間に悪化して最期を迎えました。いつも世話をしていれば、獣医でない私にも犬の状態がよくわかります。大切なお子さんをみている保護者の方々も、いつも子どもへのアンテナをしっかり立てて、身体や心の異変に早く気付いてあげてほしいと思います。子どものことが一番よくわかるのはご両親のはずですから
相談室からの風景-ファイル・6
乳児期後半の発達 -「世界を取り入れる」-
発達心理学で乳児期後半とよばれるのは、個人差はありますが、だいたい6?7か月頃から、「直立2足歩行」が完成する1歳前半頃までの期間です。「寝たきり」で自分から位置の移動はできない乳児期前半と比べ、エネルギッシュに「動き回り」、「探索」し、その発見を「他者との間で共有する」ことができるようになる、という時期です。
姿勢運動面では、「寝返り」「ずりばい」から、おなかが上がった「ハイハイ」へ、そして足の裏を地面につけた「高ばい」「伝い歩き」へと、重力に逆らい「たっち」の姿勢を目指して、だんだんと移動の自由を獲得していきます。生後10か月頃には上手になった「お座り」の姿勢を基本姿勢として、何かイイモノを見つけては「お座り」から「ハイハイ」、「つかまり立ち」から「伝い歩き」、そしてまた「お座り」へと姿勢を変えて、目標をとらえた移動を繰り返して遊びます。
また、何か持ったらワンタッチで両手で口に持っていって確かめていた手は、「持つ?離す」という操作が左右の手で可能になり、ティッシュペーパーやたたんだ洗濯物、引き出しの中身などを、取っては投げ、取っては投げ、して遊びます。散らかした惨状を見つかり「コラッ」と叱られても、逃げも隠れもせずニコニコと笑います。そして中の物を出す、ということしかできなかった手が、逆に、入れ物に「入れる」、相手に「渡す」、ある場所に「乗せる」、という、位置をとらえて「定位」することが出来るようになるのも、10か月頃です。手指の操作も、がしっという鷲づかみだった手指から、少しずつ人差し指が出てくるようになり、小さいボウロ
のようなものでも、上手に親指と人差し指でつまむことができるようになります。器用になった手の機能は、離乳食を食べるときにも存分に発揮されます。まだスプーンなどの道具は使えませんが、汚すからと触らせないのではなく、この時期は手からも栄養を取り入れるのだ、と割り切って、自分で食べ物を口に運べる喜びをいっぱいに感じさせたいものです。
6か月頃に振りまいていた笑顔は、親しい養育者(母や先生)との関係が深まってくる8か月頃になると、知らない人への「人見知り」へと姿を変えます。怖ければこっちを見なければいいのに、わざわざ、身を乗り出してのぞいては泣く姿には、不安もあるが、新しい世界への興味も捨てられない、矛盾に満ちた子どもの、未来への可能性を感じます。これも、生後10か月ごろには、新しい関係を他者と結ぶようになります。
次回は、その10か月頃から、1歳半ば頃の幼児期への飛躍的移行期についてのお話です。
小倉
ヨコピーの子育て知恵袋
「副鼻腔炎(蓄膿症)」
一般に蓄膿症(ちくのうしょう)と言われている副鼻腔炎(ふくびくうえん)は、カゼに続いて起こる副鼻腔粘膜の炎症をいいます。副鼻腔は、目と目の間・おでこの裏・頬の裏側・鼻の奥の4つの部屋をまとめたものです。全ての副鼻腔は、小さな通路で鼻腔とつながっています。副鼻腔炎は、急性と慢性があります。
急性の一般的な症状は、カゼの後に鼻づまり・頭痛・頭の重い感じ(頭重感)・頬や目の奥の痛み・膿性の黄色い鼻水(のどの方に垂れ込むこともある)などがみられます。子供の場合は、膿性の鼻水(青鼻)が唯一の症状であることがほとんどです。慢性になると、急性の症状の他に臭いが分からないと言うこともあります。急性はほとんど自然に治りますが、症状が長引いたり重症の時には抗生物質を内服します。家庭では、乳幼児は上手く鼻がかめないので鼻水を吸引する、鼻がかめる子は自分でかむように声をかけるなどして下さい。
症状が一時的に良くなっても、風邪がきっかけとなって悪化することがあります。
ご案内
1 休診のお知らせ
6月7日(土)横田先生学会出席の為、休診となります。
2 13歳未満のお子さんは、自転車に乗る時ヘルメットをしましょう。
最近、自転車の運転事故や危険性が話題になっています。6月からは、13才未満のお子さんは自転車ヘルメット着用が保護者の努力義務になります。お子さんを乗せた自転車が倒れて頭を打った、と言って来院される方もいらっしゃいます。
自転車については、様々な議論があると思いますが、便利さと安全、どちらが重要でしょう?この機会に、ご家庭で話題にしてみてはいかがでしょうか。
3 6月21日(土)夜9時 NHK教育テレビ「すくすく」 横田小児科医院出演
初めての予防接種をテーマに当医院で撮影されました。撮影日に予約されていた方に事前に撮影許可を頂き、来院していただきました。ご協力ありがとうございました。接種後はインタビューもありましたが、楽しんで頂けましたか?スタッフにも普段と同じようにしてください、ということでしたが・・どうでしょう? おそらく緊張していなかったのは、横田先生だけではないでしょうか。放送内容は、初めて予防接種をするお子さんや保護者の方を対象にしているので、これから予防接種を予定している方は是非ご覧下さい。また、当院スタッフの緊張振りを楽しんでいただくのも御一興かと・・・。ご感想お待ちしております。
編集後記
先日、銚子のイルカを見に行こうと誘われました。しかし、雨天の為あえなく中止。この時期を逃すと来年まで見られないそうですが、ほっとした感もあり。まだいける、というのは気のせいでしょうか・・。来院される患者さんをみると、やはり、疲れが出てきたようです。天候が変わると体調も変わりますからね。さて、雨の季節。皆さんはどう過ごされますか?