院内報
こあら通信 第109号 2007 May
目次
・小児医療をみんなで守ろう
・ジオくんのお薬教室
・ヨコピーの子育て知恵袋
・お知らせ
・編集後記
・こあらの絵
小児医療をみんなで守ろう
桜の季節もあっという間に終わって、少しずつ暖かくなってきました。山も色づき始め、季節の動きをはっきりと感じます。そんな京都へ出かけてきました。日本小児科学会総会へ出席するためです。
今年の学会では、小児医療をどのように提供するかが大きな話題の一つでした。最近マスコミを賑していますが、小児科医の労働環境、小児医療の不採算性、受診者の変化に問題点を分けて考えてみましょう。
労働環境の問題は、主に病院小児科勤務医の問題です。ある小児科勤務医の自殺が、過労死として労災認定されました。若い小児科医の1週間の平均労働時間は、60時間を優に越えます。週に1回は当直があり、当直明けの日にも夕方まで働くのが常識です。学生はそれを見て小児科を敬遠するようになり、中堅の勤務医は見切りをつけて開業する人が増えています。小児科医の多くを占める女性医師はこの環境の中で働くのは難しく、子育て期に入ると離職してしまいます。この悪循環がさらに労働環境を悪化させています。
これらの要因の一つが小児医療の不採算性です。診察でも検査でもたくさんの労力と時間を要しますが、現在の保険ではそれが正当に評価されていません。そのために病院小児科は赤字になり医師を増やせませんし、計算高い学生は小児科を敬遠するようになっています。
小児医療を受ける側の問題も深刻です。いつでも、どこでも、小児科専門医の診察を受けたい、という希望が強くなり、病院小児科へ患者さんが押し寄せます。子育てに不安が強く、本当の意味で急患ではない人もかなり含まれています。小児科医はすべての要望に応えることはできません。厚生労働省は夜間の診療報酬を上げて、小児科医をもっと時間外に働かせようとしているようですが、そんなことではますます小児科医の成り手がなくなるでしょう。
忘れてはならないことは、主役が「子ども」だということです。子育て支援にじゅうぶんな資金を投入しない政府にも、仕事のためにじゅうぶんに子どもの世話をできない保護者にも、どこか問題がありそうです。小児科医だけでなく、社会全体で考えることが必要なのだと思います。
ジオくんのお薬教室
皆さんは、「ステロイド軟膏」と聞いただけで「怖くて使いたくないなぁ」と思ってはいませんか?今回は、ステロイド軟膏についてです。
ステロイド軟膏は、湿疹や皮膚の炎症やかゆみを抑える塗り薬です。その効果により5段階に分類されます。症状がひどい時には、まず強いステロイドを炎症の“火消し役”として用いることがあります。その後、順次弱いものに切り替えていくようにします。軟膏の吸収率は、体を「1」とすると顔は10倍も吸収しやすいので、原則として体より1ランク弱いものを用います。軟膏を数日使う程度なら副作用の心配はまずありません。自己判断で長期に使用すると、皮膚が萎縮して薄くなる、毛細血管が拡張して赤みを帯びるなどの副作用が現れることがありますが、医師の指示に従い、症状に合った薬を適切に使えば決して怖い薬ではありません。
軟膏の塗り方は、患部をきれいにし、きれい
な指で適量を薄く塗りのばして下さい。この時、強くすり込むとかえって刺激になるので軽く塗って下さい。人差し指では力が入りすぎることがあるので薬指で塗るのをおすすめします(これが薬指という名の由来らしいです)。塗った後は、健全な皮膚に塗り広げないようよく手を洗って下さい。また、塗った直後に強い日差しは浴びないようにして下さい。
医師の指示通り使用しても症状が良くならなかったり、薬を塗った部分が赤くなったりはれてきた時は、再度診察を受けて下さい。
主な軟膏の分類
強い Ⅰ群 ダイアコート・フルメタ
↑ Ⅱ群 マイザー・パンデル
Ⅲ群 プロパデルム・フルコート・リドメックス
↓ Ⅳ群 アルメタ・キンダベート・ロコイド
弱い Ⅴ群 プレドニゾロン
「ステロイド」といっても、それほど心配する必要がないということがわかってもらえたかな。さて来月
はどのお話をしようかな?今回はこの辺で終わりますワン!
ヨコピーの子育て知恵袋
<さかさまつ毛>
赤ちゃんの目やにが多く、眠った後などはまぶたがくっついて、眼を開けることが出来ないという様な訴えを聞くことがあります。このような赤ちゃんの目をよく見ると、下まぶたのまつ毛が眼球の表面に触れていたり、涙でべったりくっついていたりするのに気がつきます。赤ちゃんの下まぶたの皮下脂肪がよく発達して下まぶたがふっくらとふくらみ、その結果下まぶたの縁が内側を向いているために起こる現象です。大人に見られる「さかさまつ毛」は、まつ毛の中の何本かが眼球の表面に向かって生えている状態で、その生え方の悪いまつ毛を抜き取る治療を行います。赤ちゃんの場合は、これと違って必要に応じて点眼薬を使うだけで、成長に伴って自然に治ります。ただこの場合、まつ毛が眼球に触れることで、時には角膜に炎症を起こす場合があります。まぶしがって明るい光を嫌がったり、まぶしそうな目つきをしたりするときは、専門医に相談し治療しましょう。
お知らせ
1.診察に斎藤先生が加わりました。
4月から診察に斎藤祐(さいとうたすく)先生が加わることになりました。
斎藤先生は現在、東京大学付属病院小児科の医局にいます。今後、月2回土曜日にいらしていただく予定です。よろしくお願いいたします。尚、アレルギー外来は引き続き横田先生が担当いたします。
2.小田原高等看護専門学校の実習生がきます。
今年も小田原医師会が運営している、小田原高等看護専門学校の学生が実習で当院を訪れます。第1陣は5月28日、29日の2日間来院します。これから1?2カ月毎に実習がありますので、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
おすすめの絵本(紹介:おはなしたんぽぽ)
『AはアフリカのA アルファベットでたどるアフリカのくらし』
イフォルマ・オニュフル作・写真 さくま ゆみこ訳 偕成社
英国在住の作者が、息子のエメカにアフリカの良いところを伝えたくて作った本です。
伝統的な村の暮らしや、おしゃれの仕方、家族や人々の暖かい絆が伝わってきます。
編集後記
5月も連休を過ぎると初夏の気配も感じられる季節となります。横田医院も冬の間に着用したラガーシャツをそろそろしまって、ふたたび「かりゆし」ルックに替えようかと思っています。そうはいっても、まだまだ寒い日もありますし、体調には気をつけましょう。今年ははしかが流行るかもしれないなどという気になるニュースも聞こえてきます。予防接種は早めに!接種忘れがないかもう一度確認を!!