横田小児科医院

院内報

こあら通信 第309号 January 2023

回答

 インフルエンザの迅速検査が発症後24時間経っていないと陽性の判定が出ないというのは正しくありません。インフルエンザに感染すると鼻の奥にインフルエンザウイルスが定着して増えますが、迅速検査はウイルスに反応して結果が出るので、「ウイルスの量が少ないと、感染していても検査が陽性に出ないことがある」というのが正しい考え方です。

 いつ発病したかを確定するのも難しいですし、最近は少ない量のウイルスでも陽性に出る感度の高い検査キットも続々と開発されているので、発症24時間以内でも陽性に出ることはたくさんあります。ただし、陰性の場合にはインフルエンザではない、と言いきれないという問題が起こり、熱が続く時には翌日もう一度検査してくださいということになるのです。

 そもそもインフルエンザは一刻も早く診断しなくてはならないか?…という問題がそこにはあります。インフルエンザには、一昔前には治療薬(抗インフルエンザ薬)はありませんでした。迅速診断キットが初めて開発された1999年頃には、確実に診断できるという面白さはありましたが治療薬はありませんでした。従って、周囲へうつさないように気をつけるということ以外に診断するメリットはなかったのです。

 しかし、抗インフルエンザ薬が使われるようになり、事態は一変しました。早く診断して早く治療を開始すれば、苦しい期間も短くなり、合併症も減らせ、周囲への感染も防げると考えられるようになってきたのです。しかし、本当にインフルエンザはできるだけ早く診断して治療した方がよいのでしょうか。世界の中で、日本は最も多く迅速診断キットを使っていて、最も多く抗インフルエンザ薬を使っているといわれています。米国では加入している保険にもよりますが、一般的にはインフルエンザが重症にならないと抗インフルエンザ薬を使わない(保険上使えない)ことになっています。インフルエンザは大部分が自然に治る病気なので、無駄な医療費を使いすぎてはいけないという考え方がそこにはあります。現在の日本は皆保険で医療費も安いので気楽に受診できますが、医療費の増加が続くとこの体制が崩れてしまう恐れがあることも忘れないでほしいと思います。

 本題に戻ります。熱が出てインフルエンザを疑った時に、子どもが元気なのに「すぐに病院を受診して検査してもらってください」と園・学校の先生が促すことはやめてほしいと多くの小児科医は考えています。このような勧めは、インフルエンザに対する誤った恐怖感を植え付けてしまうことにもなります。皆が心配して受診すると、クリニックや急患診療所の外来機能が麻痺してしまい、緊急で医療が必要な患者さんの診療が後回しにされる可能性もあります。インフルエンザの可能性があっても、子どもが重症でなければ1日くらい様子をみてから受診すればじゅうぶんです。インフルエンザの可能性があると思ったら、まずは安静にして、他の人にうつさない対策をとりながら子どもの様子を看てほしいと思います。

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