横田小児科医院

院内報

こあら通信 第97号 2006 May

目次

・いのちの大切さ
・日本脳炎Q&A
・ヨコピ-の子育て知恵袋
・おすすめの絵本

いのちの大切さ

 毎朝の犬の散歩で、うぐいすのきれいな鳴き声が聞こえてきます。急に春の気配が濃くなって、枯れていた木々にもみどりの葉が顔をのぞかせています。今年もいのちの力強さを感じる季節がやってきました。

 「般若心経」を現代詩に訳したことで有名になった、遺伝学者の柳澤桂子さんのエッセイを読む機会がありました。本屋さんの立ち読みで偶然手にした本でしたが、「永遠の中に生きる」という題名に引かれて買い求めたものです。

 生命の起源はDNAと呼ばれる分子で、まだ熱い海の中で今から40億年ほど前に誕生しました。DNAは進化して細菌や真核生物となり、複数の細胞からなる生物が出現します。人類は今から約700万年前、アフリカにいた大型類人猿の中から進化したと考えられています。

 「この長い歴史の中で、今生きている細胞より死んだ細胞の方がずっと多いという意味において、生命の歴史は死の歴史である」と作者は言っています。多細胞の生物は必ず死ぬという現実の中で、その遺伝情報は生殖細胞の中に組み込まれて生き続けているというのもまた事実なのです。

 B・サイクスという遺伝学者が書いた「イヴの七人の娘たち」という本があります。亡くなった人の骨からDNAを抽出するという方法で、ミトコンドリアDNAの系統を調べた研究です。ミトコンドリアDNAは母親からしか伝わらないので、どこまでも女性の家系をさかのぼることができます。全世界で現在遺伝学的に35種類の系統がみつかっていますが、その始祖を更に追跡すると、すべての系統はアフリカ出生のただ一人の15万年前の女性に行き着くそうです。

 気の遠くなるような時間の流れの中で、いのちを繋いでいこうとする力が働いていることを感じます。私たちはこの歴史の中に生き、子育てをしていのちを次の世代へ伝えているのですね。少子化が問題となる昨今、いのちの大切さをもっと真剣に考えるべきだと思いました。

日本脳炎Q&A

日本脳炎の予防接種は昨年7月に3期(中学生での接種)が廃止されました。また、以前から副反応の可能性が指摘されていた急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の比較的重症な例が見られたことから、「積極的な勧奨中止」という、わかりにくい措置がとられています。いくつかの問題点をQ&Aの形でまとめてみました。

Q.日本脳炎ワクチンは接種しなくてもよくなったのですか?
A.予防接種法に定められた接種としての位置づけは変わっていませんが、「積極的勧奨の差し控え」の勧告が昨年5月に厚生労働省から出されました。新しいワクチンを開発中なので、「しばらくの間は積極的には受けなくてよい」と言っていると解釈してください。

Q.日本脳炎のワクチンを打たなくても、発病する危険は増えないのですか?
A.日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを媒介するコガタアカイエカが、そのウイルスに感染したブタの血液を吸血した後、ヒトを刺すことによって感染します。食用のブタに日本脳炎ウイルスが感染しているかどうかの調査は定期的に行われていて、日本の南の地域では高い確率で感染が起こっています。また、昨年の神奈川県でも30%以上のブタに感染があったと報告されています。コガタアカイエカが生息する水田も減り、感染しても発病する人は数百人に一人なので、患者さんの数はわずか(神奈川県では20年くらい発生がない)ですが、予防接種が必要ないとはいえないのです。

Q.新しいワクチンが出ると聞きましたが、どうなっていますか?
A.今年の夏前には新しいワクチンが出るという話でしたが、注射部位の腫れが強いので作りなおしているようで、今年度には出ないだろうという情報です。

Q.今までのワクチンで接種は受けられますか?
A.受けられますが、同意書を書いていただくことが必要になっています。ADEMが起こる確率は100-200万回の接種に1回と、きわめて低いものです。

Q.まだ日本脳炎の接種を一度も受けていないのですが、いつ接種したらよいですか?
A.最初の接種の標準年令は3歳です。1期で公費負担となるのは7歳6ヶ月未満までなので、4歳を過ぎた方は現行のワクチンで接種を開始するのがよいと考えます。

Q.1期の2回の接種は終わりましたが、追加の接種は受けていません。どうしたらよいですか?
A.2回目の接種が終わって、1年半以上経っている方は現行のワクチンで追加を受けてください。

Q.9歳になったのですが2期の接種はすぐに受けた方が良いですか?
A.2期の接種は9歳から13歳未満の間に受けることになっています。9歳なら新しいワクチンが出るのを待ってもよいでしょうが、11歳以上の方は現行のワクチンですぐに接種してください。

ヨコピ-の子育て知恵袋 <気になるあかちゃんの体重>

 わが子が健やかに成長している証拠を、体重計の表示からあらためて読み取って喜び合っている姿は、真にほほえましく感じられます。赤ちゃんの体重は栄養状態の目安というよりは、赤ちゃんの体格をやせ型と肥満型に分けたり、成長の経過が順調かどうかを判断したりするときのよりどころとして用いられるようになりました。赤ちゃんの体重は、赤ちゃんの体から得られる簡単で分かりやすい情報ですから、見方・考え方について注意したいことをあげてみます。

1.体重の多少を問題にする場合は、体重ばかりでなく身長が大きいか小さいかも同時に考え合わせてみる必要があるという点です。

2.自分のお子さんの体重を標準体重と比較するときは、その月齢の標準値と比較して、それより多いか少ないかを問題にするのではなくて、母子手帳などに示されている正常範囲の曲線に沿って増えているかどうかに注目するとよいでしょう。

 最後に、生後1年以内の乳児にと1年以降の幼児期では、体重の増え方が違うので、気になる場合は健康手帳を持って、医師に相談するのもよいと思います。

おすすめの絵本(紹介:おはなしたんぽぽ)
「まどのそとのとのまたむこう」

モーリス・センダック さく・え

わきあきこ やく 福音館書店

 アイダは、ゴブリン達にさらわれた妹を救うため、窓の外の異世界に飛び出していきます。途中、パパの歌声に助けられ、アイダは無事妹を救い出します。自分より、年下の兄弟のいる子どもの気持ちがよく描かれています。文章は短いですが、奥の深いファンタジーの世界が広がっています。絵はていねいに描き込まれていて、文章が語らない部分を物語っています。4月に復刊されました!

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